EY税理士法人
ライブラリー

2017-2018年 税務リスクと税務係争に関する調査 シリーズ5 
リスクの源から:税務当局の見解

TPC調査

米国における税制改正を主なきっかけとして、世界中の企業がストラクチャやサプライチェーンを見直し、また課税標準に及ぼされる改正の影響を各国政府が評価しています。同時に、企業と政府の双方とも、経済協力開発機構(OECD)の税源浸食と利益移転(BEPS)防止に関する勧告を理解し、実践するよう取り組んでいます。

納税者と税務当局はまた、税務係争の起こる可能性が増大している点、そして税務係争を解決するための手段は最大限に効果を発揮するとは限らないという点においても意見が一致しています。このことは、2017年にEYが実施した納税者と税務当局それぞれが対象の調査からも明白です。しかしながら、両者の考え方が全てにおいて一致しているわけではありません。納税者と税務当局の抱く懸念と目的には違いがあり、重視しているリスクも異なります。税務当局の中でも、懸念事項は国によって多岐にわたります。

現在、税務当局はより予測の立てやすいシステムが確立される過渡期にあります。これが終わるまでの間、多国籍企業は二重課税あるいはそれ以上の課税につながる係争を起こさないよう苦労を強いられるかもしれません。何が税務係争に拍車をかけるかは時間とともに明らかになるかもしれませんが、例えば(とりわけ移転価格にかかわる)透明性の増大、より積極的な税務調査、知的財産への課税、(事前確認制度(APA)や協力的コンプライアンスプログラムなどの)多国間裁判外紛争解決プログラムのもたらす効果といったことが要因として考えられます。(なお多国間裁判外紛争解決プログラムの一部については、納税者に対する調査の結果、それが二国間のものであっても、あまり魅力的ではないと受け止められている場合もあることがわかりました。)

本シリーズのレポートでは、近年の税に対する関心の高まりを "光"になぞらえています。税に向けられた光線の源は、世界中のメディア、政治家、市民組織、政府組織など様々です。シリーズの第5弾であり、最終号である「リスクの源から:税務当局の見解(From the source: the viewfrom tax authorities)」では、シリーズで恐らく最も重要な情報源と思われる税務当局の見解をお届けします。これまでのシリーズで企業を対象に実施した数年がかりの調査を経て、ついに税務当局による見解を詳しくお伝えすることができます。


納税者と税務当局が重視するリスクの違い

あなたの国でコンプライアンス上最大のリスク源は以下のうちどれですか。
最もリスクの高いものから順に、上位5項目まで選んでください。

(下の図をクリックすると拡大します)


とるべき対応

1 税務システムを最新にする

間接税やデジタル税務行政の重要性が増大し、それに対処しようと政府が熱心な取組みを進めるのに合わせ、企業は税務当局からの要請にリアルタイムかそれに近い状態で対応できるよう、ITシステムを最新の状態に維持しておくことが重要です。また、将来起こりうる係争が税務当局の優先順位リストでどう位置づけられているかを認識しておく必要もあります。税務当局は自らの希少なリソースをそれぞれ事情の異なる問題に別個に割り当てるよりも、多くの企業に適用可能な措置を行うことに関心があると考えられます。

2 税務係争を管理できるグローバルなアプローチを採用する

透明性向上のトレンドや、ニュース記事が風評リスクにつながる危険性からわかることは、自国の税務当局を最もよく理解している現地事務所に税務係争問題を任せきりにしておくべきではないということです。税務係争は国際的な問題となるおそれがあります。一国での係争が、あっという間に多国間の係争に発展することがあり得ます。そのため、グローバルなアプローチが要求されます。

3 BEPS対策でますます必要性が高まる税の確実性に備え、紛争解決プログラムへの戦略的アプローチをとる

納税者も税務当局も、それぞれに与えられた紛争解決の手段をかたく信じているわけではありません。そしてその事実は、事業の詳細を当局と共有する見返りに企業は税務上の問題点に対する確実性を得られるという、前提となる交換条件そのものに疑問を投げかけています。これまでに述べてきた紛争解決プログラムは適切に利用されればどれも非常に効果的です。つまり、企業は協力的コンプライアンスプログラム、事前確認制度(APA)、その他同種のプログラムの適切さや目的を、ケースバイケースで評価する必要があるといえます。

4 世界各地の政策転換、法律改正を注視し、速やかに適応する

2017年の米国税制改正は、世界最大の経済国である同国の過去30年で最大規模の改革でした。米国で事業を営む企業は、税制改正が運営に及ぼす影響を積極的に分析しています。世界中でBEPSが導入され、それが変化をもたらすのに加えて、多くの国が自国の税制改正によって米国の法律に対抗する可能性もあります。現在行われている税制改正の世界的な連鎖は、我々が知る現行の税法規を根本から変え、さらなる不確実性と係争を生む土壌になるかもしれません。


結論

本調査シリーズでは、企業が多国間にまたがる多面的な税務係争を効果的に管理するために行うべき数十もの具体的な措置について概説しました。しかしながら、政府が自分たちにとって最善と思われる措置を次々と導入し、税務当局が前例を見ない量の情報を入手して共有するようになった今、極めて明白なことが1つあります。すなわち、企業は税務リスクと税務係争を管理するためにグローバルかつ一貫的なアプローチを策定すべきだということです。税務の一元化が着実に進められてゆく今日の世界情勢から逃れることはできません。行動すべき時は今です。



シリーズ5の調査レポートをPDFでDownload (835KB)


本サーベイのトップページへ