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2017年税務リスクと税務係争に関する調査 シリーズ3
企業が取るべき税務係争対策

TPC調査

多くのグローバル企業にとって、実効税率の積極的な管理は重要な目標ですが、今日の税務環境においては、税務リスクを最小限に抑え、ビジネス上の風評を維持することが緊急性の高い優先事項となっています。 タックスプランニングを評価する際、企業は様々な点を考慮する必要があります。

本調査は2017年1月から2月にかけて、英語、スペイン語、中国語、日本語で実施され、69カ国、17業界以上の税務・財務部門の幹部(901名)が回答されました。

企業が取るべき税務係争対策

BEPS行動計画は、長年の定義や規則、慣行に代わる新たな報告や税務コンプライアンスについての要求事項を定め、税務当局に対するさらなる協力を求めるものです。同時に、グローバル金融危機に関わる歳入確保の目的で、税務行政や税制執行がより厳しくなりました。こうした展開は、税務当局-納税者間の実務のあり方を根本的に変え、また税務に関する決定事項が自身の評判、ブランド、内外部のステークホルダーとのコミュニケーションにどのように影響を与えるかについて再考するよう、企業に促す結果となりました。

こうした新たな世界情勢においては、企業にとって税務リスクや係争管理への一貫性のあるアプローチが重要になります。BEPSによる取組みは、認識する限りの劣悪なタックス・ストラクチャーに対処するための新たなツールを税務当局に提供し、企業の税務をより厳しく調査するよう促しています。各国政府がBEPSの行動計画を(一貫性を欠く場合もあるものの)引き続き導入し、税務当局が納税者に関するデータの入手方法をより洗練させ、税務コンプライアンスを迫る中で、今後数年間の国際的な税務情勢は依然、不安定なものとなるでしょう。このことは、企業が今後、さらなる調査や税務係争、二重課税を経験するということを意味しています。

税務環境が包括的に変わりつつある中、2017年の税務リスク・係争調査に参加した、69の国・地域で税務・財務に関与する経営幹部901名によれば、企業が税務リスク・係争に関する対策を積極的に講じており、税務コンプライアンスのより安定した体制を整えている、ということは明らかです。調査対象の半数以上(55%)は、過去2年間で税務係争の管理の重要度が幾分、もしくは相当増したとしています。大企業(年間売上高が30億米ドルを超えるグローバル企業)の場合、結果は64%にまで跳ね上がります。

変わりゆく税務環境下での舵取り

BEPS導入以降の世界において、企業は変化が著しく、時として敵対的な税務環境に適応してゆかなくてはなりません。 各国の政府がBEPS勧告の導入を継続する中、世界中で毎日のように各国の法規制の改正案が審議、制定されています。 立法上・行政上の様々な改正によって、企業は事業拠点とする国における継続的な展開を監視するための効果的なプロトコルを確立するだけでなく、政府の新たな規制導入に見合った適切な人員やプロセス、システムに対応し、各国による法規制の違いに留意するよう圧力をかけられています。

企業は、厳しい執行を伴うこのような時代の影響を、当然ながら実感しています。 調査回答者の58%が、過去2年の間に税務当局が国境を越えた問題や取引をより重視するようになったと述べています。 55%の回答者は開示・透明性に関する要求事項が、41%は税務調査の回数や積極性が増大したと回答しています。 18%の回答者は、一般的租税回避防止条項や特定の租税回避防止規則の適用が増大したと述べています。

「経営幹部や取締役会にとって税務リスクは一番の関心事になっています。紛争防止のみならず、紛争が実際に生じた場合の早急な解決法への関心はこれまでになく高まっています」

̶ ロブ・ハンソン EYグローバル 税務係争リーダー

より広範なビジネスへの波及効果

特にメディアの執拗な報道や企業名公開(公式、非公式にかかわらず)、ペナルティ、訴訟や刑事責任を問われるケースが頻発している現状において、企業はもはや、税務に関する意思決定が企業利益にどのような影響を及ぼすかに絞って検討するだけでは不十分です。 事実、今や、税務戦略と企業の風評とは密接にリンクしていると考えられています。 務に関する意思決定がグローバレベルの一貫性、実体性に関する基準を満たしているかを検討するだけでなく、企業は利益団体やメディア、一般市民といった複数のステークホルダーから "公正"かつ "容認できる"といった見解が得られるよう配慮しなければなりません。

今回の調査で明らかになったのは、高まる税務リスクによって、企業の税務活動やより広範な事業の取組みに大きな影響が及ぼされている、という点です。 全調査回答者の30%は税務リスクを回避するために移転価格の変更を行ったといいます。 その他では、23%はファイナンスの方法を変更し、17%は関連する法人の実体性を変更、その他の17%はM&A取引内容を修正したと回答しています。

大企業においては、33%は移転価格制度の変更を行い、31%はファイナンスの方法を変え、24%はM&A取引を変更し、23%はハイブリッド・ストラクチャリングを変更したと回答しています。

税務リスクへの戦略的な対処

EYの調査結果からは、企業が税務リスクに対処するための様々なプロセスやツールを導入していることは明らかです。全調査回答者の3分の2以上(68%)が、世界で現在発生している税務係争(調査中のものも含む)を、完全かつ十分に、あるいは部分的に予測できていると回答しいます。 大企業の場合、その結果は81%に跳ね上がります。日本企業においては、結果は47%であり、低い数値になっていることが少し気がかりです。

フランスに拠点を置く企業が予測している水準は最も高く、100%が完全、十分、又は部分的に予測していると述べています。南アフリカに拠点を置く企業は2番目に高い水準(84%)を示し、次いでシンガポールと英国(83%)、ベルギー(82%)、そして米国(81%)の順になります。 チェコを拠点とする企業の予測性が最も低い結果となり、わずか20%が十分に予測できているとし、40%は全く予測できていないと回答しています。

全調査回答者の57%は過去2年間で税務係争に関する方針を変更した(部分的、軽微な、又は大幅な変更)と回答し、4%は方針を完全に改訂した、あるいはこれまでになかったいくつかの方針を策定したと回答しています。 日本企業に関しては、そもそも自社の税務リスク・係争方針をもっていないという回答が31%にのぼっています。これは世界の大企業の数値(9%)に比べて、著しく高いものになっています。


結論

企業への課税を取り巻く諸問題は、ここ数年間にわたり世間の厳しい注目の的になり、EYの調査では、企業がこうしたことから逃れようと尽力しているのがわかります。 技術の急速な発展や、これまでに見られることのなかった多国籍企業の躍進は、税務上のルールを根本的、恒久的に変えてしまったようです。 かつては納税申告後、早くとも数カ月後にしか発生していなかった係争が、今では税務申告書そのものが存在しなくなり、リアルタイムで係争が起こるような未来へと突き進んでいます。

これらは、企業の運営にとって極めて大きな課題です。最善のアプローチは経過を追跡し、事業拠点とするすべての国々の様々な(そして、常に変動している)税法へのコンプライアンスを徹底することで、係争を初期段階で食い止めることです。 しかしながら、紛争の中には避けられないものがあり、争いを封じ込め、効果的に解決できるプロセスを備えておくことが重要になります。 この新たな税務リスクの環境において、不透明性を払拭し、高まる係争の可能性を最小限に抑えるために、企業にとっては積極的な姿勢こそが最大の防御策となります。


シリーズ3の調査レポートをPDFでDownload (1.0MB)


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