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米中間の追加関税における貿易協議Phase One合意
今後企業に求められる対応とは?

Japan tax alert 2019年12月25日号

エグゼクティブサマリー

過去2年間において米中双方が追加関税の発動を繰り返してきましたが、2019年12月13日に、公式的な合意としての枠組みが置かれました。

この枠組みの主要な要素は、Phase One Agreement(AgreementまたはPhase One)と呼ばれています。主な内容としては、米国の通商法301条(Section 301 of the Trade Act of 1974)に基づく対中国追加関税リスト4Aについて、追加関税率の15%から7.5%の引き下げ(適用日は後日発表)、リスト4Bについては追加関税の無期限停止(ただし免除とはならない)が行われます。

ただし、対中制裁に関する通商法301条調査報告書が示しているその他解決すべき問題はいまだ多くを残しています。事実、米中間において今後さらに交渉が行われることが示唆されており、Phase One合意のみで米中間の問題が解決されたとするのは危険といえます。

具体的な内容については、以下のとおりです。


詳細

経緯として、2017年8月においてトランプ大統領の指示により、USTR(アメリカ合衆国通商代表部)は中国の法令などが米国の知的財産、技術革新、テクノロジー発展に悪影響を与えていないか、米国の対外制裁に関する条項である通商法301条を根拠に調査を行いました。調査結果によると、中国による不公正な貿易慣行を認定し、報復として中国原産品に対して追加関税を行うこととしました。

具体的な内容については、以下の表にまとめています。

<米国側の中国原産品に対する追加関税発動状況>

米国側の中国原産品に対する追加関税発動状況
  • 中国側は米国側の追加関税の対抗策として輸入額1,850億USD相当の米国原産品について5~15%の追加関税を課している。

※ 品目数については適用除外となった品目も含まれる


今回Phase Oneについて合意がされましたが、2019年10月11日のトランプ大統領と劉副首相間の共同記者会見によると、Phase TwoやPhase Threeについて今後交渉が行われる可能性を示しています。


また、新しい公表内容は以下を含みます。

<主な合意内容について>

  • 米国側
    • 2019年12月15日からリスト4Bについて無期限の発動延期(ただし免除はされない)
    • リスト4Aの120億米ドルの対象については後日発表される日付から税率15%から7.5%へ税率を下げることを合意
    • 輸入額2,500億米ドルもの品目につき、リスト1、2、3にて25%の関税を課すことを維持
    • 今後中国原産品について、一定の種類の品目について関税の引下げを行い、その引下げを増やしていくことを約束(中国のThe State Council Information Ofiiceの発表による)
  • 中国側
    • 将来の2年間にわたり輸入額2,000億米ドル以上の米国原産の物品(特に製造物品、食料品、農産品、水産品やエネルギー製品)、サービスについて購入することを合意
    • 知的財産の分野、市場アクセスを得るための技術的移転条件、金融サービスの規制障壁からの自由化、通貨価値の減少の防止策の策定を行う
    • 2019年12月15日から、米国原産のリスト4と自動車製品について追加関税の発動を一時的に停止することを合意(5207品目、輸入額750億米ドル)
    • 金融アクセスを緩和することを合意
    • 知的財産、とりわけ医薬品関係、企業秘密、地理的表示、トレードマーク、海賊版、模倣品についての問題について対処することを合意
    • 必要な市場アクセスのための技術的移転を行う
    • 通貨制限や価値の引き下げについての緩和措置を行う
  • 両国において紛争解決条項に合意
  • Phase Oneは公式な文書が作成されており、1月に署名され、同月中に発効される見込み

今後の交渉について

Phase Oneにかかわらず、対中制裁に関する通商法301条調査報告書おいてUSTRは、中国へ対し米国は5つの不公正な貿易慣行が存在することを言及しています。これらの不公正な貿易慣行について、Phase Oneによりすべてが解決したわけではないため、Phase Two、Phase Threeとして今後の交渉が行われることが予想されるものは以下となります。

<今後の交渉が予想される中国の5つの状況>

  1. 不公平な技術的移転制度
    ジョイントベンチャーにおける中国参入などにおいて、海外の経営主体の参入制限があること
  2. 差別的な使用許諾にかかる制約
    中国国外企業は、知的財産や技術権利を中国国内企業へ使用許諾することを強制される
  3. 国外投資家への規制
    中国政府はテクノロジーなど一定の産業分野において国外へ直接投資を行っているが、米国投資家が中国市場に投資することは規制されていること
  4. 米国の会社へサイバー攻撃することにより、知的財産や機密度の高い商業的情報が盗用されていること
  5. 技術移転、知的財産、技術革新に関するその他方針、慣例について

企業に求められる対応

企業は今回の合意内容、および今後のPhase Two以降について注意深く観察していくべきです。米国による一部追加関税発動は停止されるものの、依然としてリスト1~4Aまでの追加関税は存在しており、その対策のため関税のプランニングが重要となります。以下に挙げた点はすぐに企業が対策することができるものとして有益なものとなり、米中間で貿易を行う企業の参考となります。

  • サプライヤーや顧客との契約内容をレビューし、追加関税の負担を負うことになる関係者は誰なのかを理解し、また関係者間において交渉の機会を持つべきかを検討すること
  • サプライチェーンの細部までを深く理解し、製品や潜在コスト、代替材料の選択肢、中国国外で製造を行うなど、サプライチェーン内においてどのような影響があるか検討する。また、301条追加関税が増加することに対応するため、原産地の認定など影響を与える要素について検討を行い、関税額の支払いを最小限にとどめる機会を持つこと
  • 米国の保税倉庫(Bonded Warehouses)、自由貿易地域(FTZ)(US税関から特別に許可を受けた場所へ貨物を置き、買手がついた時点で輸入通関を行えるもの)、代替関税還付制度(substitution drawback、輸入後材料として使用し、製品となって輸出した場合に輸入貨物の関税が還付される制度)、Chapter 98(米国原産品が輸出されたが、米国内で修理などするために輸入する場合の関税無税、引下げ)を有効に活用することで通商法301条追加関税について繰延、適用除外、払い戻しを受けるための戦略を策定する
    反対に中国への輸入の場合は、中国関税法で規定された同様の方法によることができないか検討する
  • Section 301追加関税について輸入製品の関税評価額を最小限にするため、現状の移転価格の算定方法について再評価を行い、関税評価額におけるファーストセールの価格の使用を考慮するなど、米国関税法における関税評価上の戦略を策定する

※本アラートの詳細は、下記PDFからご覧ください。


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