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米国、BEAT最終規則

Japan tax alert 2019年12月5日号

2019年12月2日、米国財務省は、2018年12月13日に公表されていた内国歳入法第59A条(税源浸食濫用防止税(Base Erosion and Anti-Abuse Tax 、以下「BEAT」))に係わる財務省規則草案を一部改訂の上、最終化しました。規則草案の193ページに対し、最終規則は342ページに上っています。最終規則は多くの部分で規則草案の内容を踏襲していますが、パブリック・コメント期間に寄せられた多くの意見を基に一部改訂が加えられています。日本企業の米国子会社に関心が高いと思われる主たる改訂部分は次の通りです。規則草案公表時のアラートはこちらをご参照下さい。また外国関連者に対する支出に係わる損金を自己否認する選択等、新たな検討に関しては規則草案が同日公表されています。


BEAT概要

BEATは、一定要件を充たす株式会社および米国税務上事業主体課税を選択している事業体(「Corporation」)に関して、外国関連者に対する特定の支出(「Base Erosion Payments」)に起因する損金算入額(「Base Erosion Benefits」)および繰越欠損金使用額のBase Erosion%相当を加算調整した「修正課税所得」に年度によって5%、10%、12.5%(銀行と証券会社は各プラス1%)のBEAT税率を乗じ、当該BEAT税額が通常の法人税額を上回る場合に超過額を「BEATミニマム税」とするという規定です。

従来の代替ミニマム税(AMT)と異なり、BEATミニマム税は将来還付されることはありません。BEATは、GILTIと共に経済協力開発機構(OECD)が公表しているデジタル課税第二の柱のモデル的な存在ではありますが、各支払いを必ずしも常に損金不算入にするという制度ではなく、基本的には過度のBase Erosion Benefitsが存在する場合にミニマム税を課すというものです。また支払先となる関連者が所在する国の税率にはかかわりなく適用されます。


規則草案からの主な変更点

BEAT適用対象納税者

  • BEAT適用の有無を判定する売上基準テストおよびBase Erosion %テストは、50%超の資本関係を有する米国内の関連会社(関連外国法人の米国支店を含む)からなる「特定グループ」単位で実施するが、BEAT適用対象納税者ではないRICやREITについても、他の米国法人と50%超の資本関係にある場合には、特定グループメンバーに含める点を確認。
  • 特定グループメンバーが異なる課税年度を持つ場合、売上基準およびBase Erosion%は算定を行う納税者の課税年度と同時または当課税年度内に終了する特定グループメンバーの課税年度の数字を合算。例えば、3月決算の法人が12月決算の特定グループメンバーを持ち、2020年3月期に適用対象納税者となるかどうかの判断を行う場合、12月決算のメンバーの2019年12月期の売上、費用、Base Erosion Payment等を合算して基準額を算定。逆に12月決算の法人が2020年12月期に適用対象納税者となるかどうかの判断を行う際は、3月決算の特定グループメンバーの2020年3月期の数字を合算。規則草案では、他の特定グループメンバーの決算期にかかわらず、適用対象判断を行う法人の決算期に合わせて金額を確定するとしていた規則を変更。
  • 特定グループメンバー間の取引は、課税年度末のグループ状況にかかわらず、取引日に特定グループメンバーの関係にあれば計算から除外。
  • 特定グループメンバーの数字を合算し、特定グループベースのBase Erosion%を算定する際、グループ内に2017年12月31日以前に開始している課税年度が合算対象となるメンバーが存在する場合、BEAT適用以前の課税年度となるため、当該課税年度の費用、Base Erosion PaymentはグループのBase Erosion%算定には加味しない。合算対象期間がBEAT適用課税年度外となる場合も合算要としていた規則草案の規定を変更。

Base Erosion Payment

  • 米国税法の課税所得は、売上から売上原価その他特定の金額をマイナスして算定される総所得から損金算入される費用を控除して算定する。Base Erosion Paymentは総所得を減額する損金算入可能な支出を対象としていることから、売上からマイナスされる売上原価等は再保険プレミアムを除きBase Erosion Paymentに含まれない。規則草案ではこの点を間接的に規定するにとどまっていたが、最終規則では明文化。
  • ロイヤルティを含む特定の支出が期間費用、COGSのいずれに区分されるべきかについては、BEAT規則ではなく、従来からの米国税法の考え方を適用する点を再確認。また特定の支出がBase Erosion Paymentに当たるかどうかの判断についても、代理人、立替、導管、所得受領権の譲渡等の取り扱いに関する従来からの米国税法の考え方を適用する点も確認。
  • グローバル・ディーリングおよびプロフィット・スプリットに基づく所得按分に関してもBase Erosion Paymentから除外する規定は設けず、従来からの米国税法の考え方を適用してBase Erosion Paymentに当たるかどうかの判断をする点を確認。
  • 特定の支出が外国関連者に行われた後に、外国関連者から第三者に関連する支出が行われる場合もBase Erosion Paymentから除外しない旨を確認。
  • 支払いを受け取る外国関連者が受取額をECIまたはPE帰属所得として米国での申告課税に含める場合には、当額支払額はBase Erosion Paymentとならない点を確認する一方、支払いを受け取る外国関連者がCFCのケースでCFC課税やGILTIの対象となっているケースに関しては同様の除外規定は設けない旨を確認。
  • 適格出資、適格清算、組織再編等を通じた外国関連者からの資産取得は、対価が株式等の適格資産に限定されていればBase Erosion Paymentから除外。現金等の適格資産以外の対価(Boot)による資産取得は引き続きBase Erosion Paymentとなる。適格出資、適格清算、組織再編等を通じた外国関連者からの資産取得をすべてBase Erosion Paymentと位置付けていた規則草案の規定を変更。外国関連者からの分配はBase Erosion Paymentsには当たらない点は規則草案と同じ。
  • 外国関連者への資産譲渡にかかわる譲渡損はBase Erosion Paymentには当たらない。譲渡損をBase Erosion Paymentと規定していた規則草案を変更。
  • 外国関連者から棚卸資産を取得し、米国でリースに供しているケースの減価償却費用を売上原価として取り扱うべきというコメントがあったが、提案は却下。
  • 適格デリバティブはBase Erosion Paymentsから除外されるが、レポ取引や証券貸借取引で米国税務上、担保付貸付として取り扱われる取引は適格デリバティブには当たらない。
  • 規則草案では、米国連邦準備制度理事会(FRB)が外国の「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」の米国中間持株会社に適用する総損失吸収力(TLAC)最低基準を充たすために発行される内部TLAC適格債に基づく支払いのみをBase Erosion Paymentから除外していたが、最終規則では他国の法令に基づく同様の要件に基づくG-SIBsによる支払いにも除外規定を拡大。また、除外対象をTLAC最低基準額プラス15%のバファー額を含む金額に上方修正。

米国支店とBase Erosion Payments

  • 米国支店が通貨別プール法で支払利息の損金算入額を算定している場合に規定されていた別のBase Erosion Paymentの算定法を廃止し、米国資産レシオに基づく通常の算定法に統一。
  • 米国支店が損金算入する支払利息額のうち、以下の合計がBase Erosion Paymentとなる。
    1. 米国支店に直接配賦される支払利息(米国支店が保有している不動産が担保となっているノンリコースローンの支払利息、米国支店が投資しているパートナーシップで発生する支払利息の持分等)のうち、外国関連者に支払われた額。
    2. 米国支店Bookに計上されている支払利息のうち、外国関連者に支払われた額。ただし、米国支店Book負債が米国実質関連負債を上回っている場合には、米国支店Book支払利息額に逓減率(米国実質関連負債額÷米国支店Book負債額)を乗じて支払利息の損金算入額を算定するが、この逓減率をBase Erosion Payment部分にも適用する。すなわち、米国支店Bookで計上されている支払利息が財務省規則の計算方式で算出した支払利息を超えている場合は、米国支店Book支払利息を基に算定されたbase erosion paymentに逓減率を乗じて最終的なBase Erosion Paymentとする。
    3. 米国支店に配賦される支払利息が米国支店Book支払利息を超える場合は、当該超過額に外国法人の支払利息に占める外国関連者への支払利息の比率(ただし、分子・分母とも米国支店に直接配賦される支払利息および米国支店Bookに計上されている支払利息を除く)を乗じた額。なお、当該比率の算定は、米国税法ベースに代わり外国法人の財務諸表の金額を基に行う選択が認められる。
  • PE帰属所得の算定を、米国税法ベースではなく資産、リスク、機能に基づく独立企業ベース(AOA)で算定すると規定している租税条約(日米租税条約を含む)の場合、PEが認識する費用は必ずしも実際に対外的に発生している本社費用の支店に対する配賦・按分ではなく、内部取引(Internal Dealings)に基づくみなし費用となる。このようなInternal Dealingsに基づく費用が計上されている場合、当該額はBase Erosion Paymentと考えるのが原則だが、支払利息に関しては、一旦米国税法ベースでECIまたはPE帰属所得に配賦される支払利息を算定し、上述の方法でBase Erosion Payment部分の算定を行う。Internal Dealingsに基づいてPEで計上される支払利息が米国税法ベースでPEに配賦される支払利息の金額を超える場合、超過額はBase Erosion Paymentとなる。
  • 米国で30%の源泉税課税対象となる支払いは、Base Erosion PaymentsとなるがBase Erosion Benefitsから除外される(ただし、条約で源泉税率が低減されているケースでは、低減分がBase Erosion Benefitsとなる)が、支店の課税所得を算定する際にECIまたはPE帰属所得に配賦される支払利息が支店Bookに計上される支払利息を超える場合の超過額にも源泉税相当の支店レベル利子税が課される。支店レベル利子税の対象となる超過利息は、実際に源泉税の対象となる利息同様に取り扱われ、Base Erosion Benefitsから除外される(条約で税率が低減されるケースは、実際に源泉税対象となる利息と同様に、低減分がBase Erosion Benefitsとなる)点を新たに規定。

BEATミニマム税(BEMTA)

  • BEMTAは、修正課税所得にBEAT税率(初年度5%、2年目以降10%、2026年より12.5%)を乗じたBEAT修正法人税額が通常の法人税を超過する金額。特定グループ内に銀行、証券会社がメンバーとして存在する場合は、全メンバーのBEAT税率がプラス1%となるが、銀行および証券業の特定グループに占める売上比率が2%未満の場合は、税率に1%をプラスする必要はない。規則草案では、売上比率2%未満の場合にはBase Erosion%算定は銀行・証券に特別に適用される2%ではなく通常の3%基準の適用が認められていたが、BEAT税率の決定時には売上比率2%未満の場合に関する免除規定は導入されていなかった。
  • BEAT修正法人税額算定時には税額控除は適用されない一方、通常の法人税の算定時には税額控除が加味される(したがってBEMTAが発生するリスクが高くなる)のが原則だが、過年度に生じた代替ミニマム税(AMT)を後年に税額控除(AMTクレジット)として計上するケースでは、AMTクレジットに関してBEMTA算定目的で通常の法人税を減額する必要はない。
  • BEAT税率は、2018年1月1日以降に開始する課税年度は5%、翌年度以降10%、2026年1月1日以降に開始する課税年度から12.5%(特定グループに銀行・証券会社が含まれる場合は各1%プラス)だが、暦年以外の課税年度の法人が5%および10%の対象となる際には混合税率は不適用とする一方、12.5%への税率引き上げ時には混合税率を適用。

連結納税グループ

  • BEMTAは連結納税グループ単位で算定されるが、その際、連結納税グループ内法人間取引から発生する項目は算定に加味しない

適用開始日

  • 最終規則は2018年12月17日以降に終了する課税年度から適用。納税者による早期適用の選択あり。