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米国、中国原産品に対して追加関税の引上げを発表 
中国の報復関税第4弾および米国産自動車に対する報復関税再開の発表を受けて

Japan tax alert 2019年9月5日号

エグゼクティブサマリー

2019年8月23日、中国国務院関税税則委員会(以下、「中国国務院」)は、米国原産の750億ドル*1に相当する5,078品目に5%または10%の報復関税(報復関税第4弾)を発動すると発表しました*2。また、2019年12月15日より米国産の自動車およびその部分品に対する報復関税を再開すると発表しました*3

これは、米国がこれまで追加関税の対象外となっていた3,000億ドル相当の中国原産品(米国リスト4)のうち、2,650億ドル相当の輸入品に10%の追加関税を課すことを発表したことに対する中国の報復措置になります。米国が発表した追加関税は、対象品目リスト4Aと4Bの2つに分かれており、リスト4Aは2019年9月1日に、リスト4Bは2019年12月15日に発動される予定です。米国のこの発表を受け、中国国務院は8月15日、米国が10%の追加関税を発動した場合、中国は必要な対抗措置を講じると発表しました。

米国通商代表部(以下、「USTR」)は中国の発表に対して、現在2,500億ドルに相当する中国原産品に対して賦課されている25%の追加関税に、さらに5%を上乗せすることを発表しました*4(米国リスト1*5、2*6、3*7)。この措置は、2019年10月1日より施行される予定です。なお、今年後半に発動予定のリスト4Aおよび4B*8記載の対象品目に対する追加関税は10%から15%に引き上げられます。発表では、中国が報復措置として米国原産品に発動する報復関税は「正当化できない関税」だとしています。


詳細解説

中国

<報復関税第4弾>

中国の発表は、米国が3,000億ドル相当の中国原産品(米国リスト4)に対して10%の追加関税の発動を発表したことに対抗するものです9。中国の報復関税第4弾は中国に輸入される米国産の主要製品すべてを網羅しており、家庭用電気製品(例、携帯電話)、機械製品(例、エンジン)、航空機およびその部分品、医療機器、自動車、石油、燃料製品などを含む5,207品目が対象となっています(年間輸入額は750億ドルに相当)。
中国の報復関税第4弾は、米国リスト4の発動予定日に合わせて、第4弾リスト1は2019年9月1日、第4弾リスト2は12月15日に発動される予定です。リストは4つのパートに分かれており、それぞれ異なる追加関税率が適用されます(下表参照)。

報復関税第4弾

報復関税第4弾対象の5,207品目のうち1,717品目(第4弾リスト1)は2019年9月1日に、3,361品目(第4弾リスト2)は2019年12月15日に報復関税が発動されます。第4弾リスト1のうち916品目は10%、801品目は5%の報復関税の対象となります。一方、第4弾リスト2のうち912品目は10%、2,449品目は5%の報復関税が賦課されます。第4弾リスト1およびリスト2の両方が実際に発動された場合、報復関税第4弾の対象品目の36%にあたる1,828品目が10%の報復関税の対象となり、64%にあたる残りの3,250品目は5%の報復関税の対象となります。

<自動車関税>

中国国務院は2019年8月23日、報復関税第1弾~第3弾*10に含まれる米国産の自動車およびその部分品に対し、これまで停止していた報復関税*11を2019年12月15日午前12時から再び発動させることを発表しました。これにより、中国の報復関税第1弾に含まれる28品目および第2弾に含まれる116品目に25%の追加関税が適用され、第3弾対象の67品目には5%の追加関税が課されます。

米国

トランプ米大統領は2018年3月22日、1974年通商法第301条に基づく権限を行使し、米国企業の技術の不公正で有害な取得にかかわる中国の行為、政策および慣行に対して、あらゆる対抗措置を講じるよう政権に指示しました*12。その後トランプ大統領は、25%の追加関税を2018年7月6日(米国リスト1)*13および2018年8月23日(米国リスト2)*14に発動することをUSTRに指示しました。2018年9月24日には、5,745品目を対象とした追加関税(米国リスト3)を発動しました。

当初、米国リスト3の追加関税は10%に設定され、2019年1月31日に25%*15に引き上げられる予定でした。しかし、最終的に引き上げが行われたのは2019年6月1日でした*16

さらに、USTRは2019年5月13日、3,000億ドルに相当する中国原産の3,805品目に対し、最大25%の追加関税を発動するリスト案を発表しました(米国リスト4)。2019年8月13日には、約2,650億ドルに相当する中国原産品に10%の追加関税を課し、2回にわけて発動することを正式に発表しました。 リスト4Aおよびリスト4B記載の対象品目にはそれぞれ2019年9月1日および2019年12月15日より追加関税が適用されます。(2019年8月22日付、EY Japan tax alert「米国、対中追加関税の第4弾の詳細を発表 第2弾、第3弾の対象品目の一部に適用除外を承認」を参照)。

2019年8月23日には、中国が750億ドル相当の米国原産品に対して報復関税を課すという中国の措置に対抗して、すでに発動されているリスト1-3の追加関税を2019年10月1日付で25%から30%に引き上げ、それぞれ2019年9月1日および2019年12月15日に予定されていたリスト4Aおよびリスト4Bの追加関税は10%から15%に引き上げることを発表しました*17。詳細は、2019年8月26日の週に発行される官報で発表される予定のため、官報が発表され次第、すぐに内容を確認することが重要です。

また2019年8月23日、リスト1および2の適用除外申請に関する最新情報が発表されました。新たに適用除外となった産品はなく、リスト1では115件の申請を却下し、却下件数の合計は6,877件、すなわち全体の63.54%に増加しました。リスト2については、新たに8件の適用除外申請が追加されたものの、新たな承認および却下はいずれも行われていません。リスト3の適用除外は、8月2日以降、発表されていません(2019年8月22日付、EY Japan tax alert「米国、対中追加関税の第4弾の詳細を発表 第2弾、第3弾の対象品目の一部に適用除外を承認」をご参照下さい。)

企業に求められる対策

リスト4Aおよび4Bの発動により、米国に輸入される中国産品のほとんどが追加関税の対象となります。また、中国に輸入される米国産品に対する報復関税が続き、トランプ大統領が2019年8月23日の声明において、企業に中国以外の生産拠点を検討するよう促したことなどから、米中貿易に従事する企業は引き続き、追加関税の潜在的な影響を把握し、影響の軽減策を検討することが求められます。

関税コストに変更があれば、その影響を精査することが必要になるため、企業は米中間の通商交渉や政治的な動きを注視することが重要です。何らかの合意が行われれば、そこには一定の条件が含まれる可能性があり、今後の見通しに影響が出る可能性もあるため、合意が発表された段階で緊密に内容を精査することが重要です。米中間の緊張がさらに高まった場合、ビジネスやコストへの影響軽減のため、事業計画の調整が必要となる可能性があります。

企業が早急に検討すべき対策は、以下が含まれます。

  • リスト4Aおよび4Bを確認し、追加関税の対象品目を特定する。また、追加関税の影響を把握し、関税分類番号の再確認やサプライチェーンや製造拠点の調整を検討するなどの対策を講じる。また、米中両国の措置が激化しているため、以前実施した影響分析を再確認する。
  • サプライヤーや顧客との契約上、どちらが追加関税の支払いを負担することになるのか確認する。また、負担について交渉の余地があるかどうかについて確認する
  • エンドツーエンドのサプライチェーンの全体像をマッピングして、中国以外への生産拠点の移転を含め、影響を受ける製品の範囲、潜在的なコスト、代替的な調達先、代替的な製造選択肢をすべて把握し、原産地の変更など、301条による追加関税引き上げの影響緩和策を検討する。
  • 保税倉庫、外国貿易地域(FTZ)、ドローバック制度(関税還付)、HTSUS(米国関税率表)第98類および中国の関税法令上同様の制度など、追加関税の繰延、節減又は還付のための戦略を策定する。
  • 301条に基づく追加関税の対象となる輸入品の関税評価額の最小化や現行の移転価格アプローチの見直し、米国に輸入する製品にはファーストセール制度の活用などを検討する。

米国リスト4対象の製品を中国から輸入している企業は、USTRが発表する追加関税の適用除外に関する情報を注視し、適用除外のプロセスに関与していくことが重要です。また、適用除外が認められる製品は追加関税発動日以降支払われた追加関税の還付が可能となるため、リスト4対象の輸入品に関する必要な書類を準備しておくことが重要です。


巻末注


※本アラートの詳細は、下記PDFからご覧ください。


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