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米国、外国人による特定パートナーシップ持分譲渡時の源泉徴収義務

Japan tax alert 2019年5月20日号

2019年5月7日、米国財務省は内国歳入法1446条(f)に規定される源泉徴収に係る規則草案を公表しました。

2017年の米国税制改正により、「米国事業に従事する(=パッシブな投資活動ではない)パートナーシップ」の持分(「特定パートナーシップ持分」)を非居住外国人もしくは外国法人(「外国人」)が譲渡した場合、譲渡損益を米国で課税対象とする取り扱いが正式に条文化されていますが、当該規定に基づく徴税を補完する目的で、税制改正では特定パートナーシップ持分の譲受人またはパートナーシップによる源泉徴収義務を新たに規定しています。

外国人が認識する譲渡損益に対する課税と源泉徴収は表裏一体の関係にはありますが、実際には別の条文規定となっており、譲渡損益の課税は譲渡人の税負債となる一方、源泉徴収は譲受人またはパートナーシップ側の税負債となります。また、源泉徴収義務の免除規定が適用されても、譲渡損益が非課税となる訳ではない点も注意が必要です。源泉徴収は最終税額ではなく、予定納税の性格を有しており、特定パートナーシップ持分を譲渡した外国人は申告書上で最終税額を決定し、源泉徴収額をクレジットの上、過不足額に関して還付または納付を行います。

1446条(f)に規定される源泉徴収に関しては2018年4月2日に公表されたNotice 2018-29にて暫定的なガイダンスが規定されており、規則草案の規定の多くはNotice 2018-29の内容を踏襲していますが、細かい点で差異も見られます。なお規則草案は最終化されるまで法的拘束力を持たず、また規則最終化時点で規則の内容そのものに変更が加えられることもあります。

源泉徴収の対象となる特定パートナーシップ持分の譲渡損益に関する米国課税の概要は次の通りです。

  • 外国人が特定パートナーシップ持分を譲渡する場合、特定パートナーシップが仮に保有する全資産を譲渡した場合に認識する米国事業関連所得(「ECI」)のうち、当該パートナーに配賦される額を上限に譲渡益をECIとして課税。
  • ECIは申告所得であるため、外国人は譲渡損益を申告。
  • 株式と異なり、パートナーのパートナーシップ持分簿価には、パートナーシップの負債の配賦額が加算される一方、パートナーシップ持分譲渡時にはパートナーシップ負債配賦額の減少分が「譲渡対価」に含まれるため、譲受人側で譲渡対価の正確な把握はほぼ不可能。

今回公表された1446条(f)規則草案の主な内容は次の通りです。


源泉徴収義務

  • 特定パートナーシップ持分の譲受人は、原則として、譲渡対価の10%を源泉徴収。
  • 次の6つの免除規定のいずれかを充たす場合には、源泉徴収義務を免除。
    1. 譲渡人が外国人でない事実を様式W-9等で譲受人に告知
    2. 譲渡益が存在しない点を譲渡人が譲受人に告知。パートナーシップに棚卸資産等、譲渡益が通常所得とされるような資産が存在する場合、トータルで譲渡損が発生する場合でも譲渡益が発生する場合があり、その場合には当該免除規定の適用は不可
    3. 「パートナーシップの全資産をみなし売却した際に発生するECI譲渡益の金額が全資産の譲渡益総額の10%未満」であることをパートナーシップが譲受人に告知
    4. 「過年度3年全ての課税年度に関し、パートナーシップから配賦された所得に占めるECIの割合が10%未満、かつ年間のECI配賦額が100万米ドル未満」であることを譲渡人が譲受人に告知。当該規定は、譲渡人がECIを米国で適切に申告処理してきた場合にのみ適用可
    5. 特定パートナーシップ持分の譲渡が適格非課税取引となることを譲渡人が譲受人に告知
    6. 特定パートナーシップ持分譲渡が「租税条約に基づき非課税」となることを譲渡人が譲受人に告知

源泉徴収額

  • 源泉徴収額は、原則として譲渡対価の10%。
  • 譲渡対価にはパートナーシップ負債配賦額の減少分を含み、その金額は次の2つの方法のいずれかで把握する。
    1. 譲渡人がパートナーシップから受け取っている直近のK-1(パートナーシップが所得配賦額、負債配賦額等の情報を各パートナーに課税年度毎に報告する様式)に基づく額を譲受人に告知。K-1は譲渡日の22カ月以内に終了したパートナーシップ課税年度のものでなくてはならない。この方法は、譲渡人が(関連者が保有する持分も加味して)50%以上の持分を保有する支配パートナーとなる場合には適用は認められない
    2. 譲渡日(または規則で規定する譲渡前後の一定期間内の特定日)に実際に譲渡人に配賦されているパートナーシップ負債額をパートナーシップが譲受人に告知
  • 譲渡対価にパートナーシップ負債配賦額の減少分を含むことから、譲渡対価総額の10%が純資産部分に対する現金等の譲渡対価の額を超えることがあり得るが、その場合は、現金等の譲渡対価の額を源泉徴収額の上限とする。
  • 譲渡対価に含まれるパートナーシップ負債配賦額の減少分の特定が不可能な場合には、現金等の譲渡対価全額を源泉徴収額とする。
  • 譲渡人が、パートナーシップから受け取る必要情報に基づき課税対象となる譲渡益の額を確定し、適用最高税率を乗じて算定する最高税額が譲渡対価総額の10%を下回る場合、当該最高税額を譲受人に告知し、源泉徴収額とすることが認められる。

源泉徴収に係る納付・報告義務

  • 譲受人は、譲渡日から20日以内に源泉徴収額を納付し、また必要な報告を行う。
  • 納付・報告は米国不動産持分譲渡に適用される源泉徴収時に使用される様式8288、8288-Aを使用する。
  • 外国人が後日、譲渡損益を申告する際には、申告書に受領印が押された8288-Aを添付する。

パートナーシップによる源泉徴収

  • 譲受人は、譲渡日から10日以内に源泉徴収義務の履行に係る報告をパートナーシップに対して行う法的義務があるが、譲受人が適切な源泉徴収を行わない場合には、代わりにパートナーシップが譲受人に対する分配額から源泉徴収を行う。この場合、源泉徴収額は本来譲受人が源泉徴収すべきであった金額および延滞利子となる。
  • パートナーシップによる特定パートナーシップ持分の外国人からの償還は、みなし譲渡としてパートナーシップによる源泉徴収が必要となる。

源泉徴収漏れに対する利子・ペナルティ

  • 源泉徴収義務を負う譲受人またはパートナーシップが源泉徴収義務を怠ると、譲受人またはパートナーシップには源泉徴収額そのものの追徴に加え、延滞利子、ペナルティが課される。
  • 源泉徴収が他の当事者によって履行される(例、パートナーシップが譲受人に代わって源泉徴収)または譲渡益に対して譲渡人が米国法人税・所得税を申告して納付する場合、同じ税額が二度追徴されることはないが、源泉徴収義務を負っていた者に対する延滞利子、ペナルティが免除されることはない。

上場パートナーシップ(PTP)

  • PTP持分の譲渡に対する源泉徴収の適用には追加検討事項があり、2017年12月に公表されたNotice 2018-08により、1446条(f)の施行は一時停止されているが、規則草案ではPTPに係る源泉徴収義務を規定し、規則が最終化された時点で一時停止措置の解除を予定している。PTP持分の譲渡は、通常ブローカー経由で行われることから、源泉徴収義務はブローカーに対して課されている。

FIRPTAとの関連

パートナーシップの資産の時価総額の50%以上が米国不動産持分であり、かつ90%以上が米国不動産持分+現金(及び現金等価物)である場合、FIRPTAの規定(米国不動産持分の譲渡に係る源泉徴収義務)で譲受人は対価の15%を源泉徴収する必要がある。FIRPTAの源泉徴収義務と1446(f)の源泉徴収義務の双方の規定の対象となる場合、FIRPTAの規定に基づき源泉徴収を行う。ただし、FIRPTAの源泉徴収の減免申請を行っている場合には、FIRPTAまたは1446(f)の規定のいずれか源泉徴収額が大きくなる方の規定に基づき源泉徴収を行う。


※本アラートの詳細は、下記PDFからご覧ください。


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