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米国財務省、規則草案を公表 支払利息損金算入制限(163条(j))

Japan tax alert 2018年11月30日号

2018年11月26日、米国財務省は、439ページにわたる内国歳入法第163条(j)(以下、「163条(j)」)に係わる規則草案を公表しました。

「減税・雇用法」により導入された163条(j)は、事業活動から発生する支払利息が、事業関連受取利息、フロアプラン支払利息(棚卸用車両の仕入に係わる支払利息)、及び修正課税所得(Adjusted Taxable Income、「ATI」) の30%の合計額を超える際に、超過額を損金不算入とする規定です。損金不算入額は無期限の繰越が認められますが、未使用枠の繰越は認められません。ATIは繰越NOLを適用する前の連邦課税所得に償却費用(2021年12月31日以前に開始する課税年度まで)、199A控除(個人パートナー及び事業主の想定事業所得控除)、ネット支払利息を加算した金額となります。過去3年間の平均売上が2,500万米ドル以下の小規模納税者は適用を免除されます。

163条(j)に基づく支払利息損金算入制限は、「アーニングス・ストリッピング規定」として知られていた「旧」163条(j)と比較して次のような特徴があります。

  • 借入・資本比率に基づく適用免除がない
  • 第三者金融機関を含む非関連者からの借入や、米国内での借入に係わる支払利息もすべてが対象となる
  • 未使用枠の繰越がない
  • 連結納税グループに属していない関連会社グループ(例えば、日本親会社が直接保有する複数の米国子会社)の合算規定がない
  • 適用対象は法人に限定されず、事業活動に従事する個人、パートナーシップも含まれる(小規模納税者は適用免除)
  • パートナーシップに対する損金算入制限の計算はパートナーシップ単位で行う

今回の財務省規則草案は、2018年4月2日に163条(j)に係わる先行ガイダンスとして公表された「Notice 2018-28」の内容を大幅に拡大し、多くの規定が追加されていますが、他の財務省規則草案と同様、規則の最終化までにさらなる改訂が加えられる可能性があります。日本企業の米国事業に影響が大きいと思われる規定は次の通りです。

ATI

  • 2021年12月31日以前に開始する課税年度では、ATI算定時に償却費の加算が認められるが、償却費のうち、棚卸資産に計上される金額は加算対象とはならない
  • 償却費のメリット重複を防止するため、ATI算定時に加算された償却費は資産の譲渡損益算定時の簿価に加算調整する
  • 実際の課税所得算定時には、GILTI(CFCの無形資産所得の合算課税)控除及びFDII(特定の国外所得の優遇規定)として控除される金額は当該控除前の課税所得額を上限とするが(課税所得制限)、ATI算定時には課税所得制限は適用しない

支払利息

  • 損金算入制限対象となる支払利息は、税法上、利息として取り扱われる費用ばかりでなく、金銭の使用対価として支出される実質的に利息と「同等」の費用を広義に含む
  • 163条(j) の損金算入制限は、支払利息の損金算入に係わる他の規定(例えば、資産計上、グループ間繰延)の後に適用する。ただし、個人のパッシブ事業等の損失に適用される「At-Risk」、「Passive Loss」、「Farm Loss」の損金算入制限は163条(j)適用後に算定する
  • BEATミニマムタックス算定時の163条(j)の取り扱いは、後日公表が予定されているBEATに関する財務省規則草案において規定する予定

旧163条(j)からの繰越支払利息

  • 旧163条(j)で損金算入制限に抵触し、繰り越されている不適格支払利息は、2018年1月1日以降に開始する課税年度に繰り越され、原則として、163条(j)の対象となる
  • 旧163条(j)で繰り越されている支払利息が163条(j)の適用免除事業に係わる利息については、2018年1月1日以降に開始する課税年度に繰り越されるが、163条(j)の適用はない
  • 旧163条(j)で繰り越されていた制限枠は消滅する
  • 旧163条(j)をグループ合算ベースで適用していた場合は、繰越額を非適格利息の比率で各法人又は連結納税グループへ配賦する

法人(C Corporation)と事業利息

  • C Corporationが認識する課税所得、支払利息及び受取利息は全額「事業目的」のものとする
  • パートナーシップ側で投資目的と区分される支払利息及び受取利息についても、C Corporationに配賦される場合には、原則として事業目的として取り扱う
  • ただし、パートナーシップ側でSubpart F所得もしくはGILTI所得を認識し、当該所得に係わる支払利息をパートナーシップ側で投資目的と取り扱う場合には、C Corporationへの配賦額も事業目的のものとして取り扱わない
  • C Corporationに損金算入が認められる支払利息は、最初に当該課税年度に発生する利息、その後は、過年度から繰り越されている支払利息を年度順に充当する

381条・382条

  • 繰越支払利息は適格組織再編、適格清算の際に存続法人が引き継ぐ繰越欠損金等の税務属性(381条属性)に含まれる
  • 繰越支払利息を持つ法人の持分に50%超の変動(変動比率は382条に基づき算定)がある場合、NOL同様に繰越支払利息も382条に基づき、持分変動後の年間使用額に制限が設けられる
  • 持分変動が発生した課税年度の繰越支払利息は、当該課税年度の合計損金算入制限額を日数按分して、持分変動前の制限に抵触する支払利息額を決定する(持分変動時に仮決算をする方法は認められない)
  • 163条(j)の繰越支払利息が382条に抵触する場合は、持分変動後の課税年度において、持分変動以前から繰り越されるキャピタルロス、持分変動時の含み損の認識後に繰越支払利息を使用する。NOLも382条に抵触している場合には、NOLは繰越支払利息の後に使用する

適用免除事業

  • 不動産業及び農業は納税者の選択に基づき、公共ユーティリティ事業は自動的に163条(j)の適用を免除されるが、不動産業及び農業に係わる適用免除の選択は事業ごとに行う
  • 適用免除選択は、選択を行った課税年度以降に適用され、継続適用が求められる。選択は適用年度の申告書にステートメントを添付して行う
  • 適用免除選択を行った事業資産すべてを関連者に譲渡する場合、譲受人側でも選択は強制継続される
  • 納税者が適用免除事業とほかの通常事業の双方に従事している場合、支払利息及び受取利息は、各事業に供されている資産の税務簿価ベースで按分する。簿価は四半期残高の平均で決定する。ただし、ノンリコースローン、金融業に関しては借入目的によるトレーシング(紐づけ)に関する特別規定あり
  • 80%以上の持分を保有するC Corporationからの配当所得は、配当を支払うC Corporation側の適用免除事業と他の通常事業の資産の税務簿価比率に基づき、所得の性格を決定。ただし、C Corporation側で90%以上の事業資産の税務簿価が適用免除事業又は他の通常事業のいずれかに属する場合には、配当所得全額を90%以上の資産が供されている事業からの所得として取り扱う
  • 連結納税グループは単一納税者として取り扱い、グループ内のどの法人が適用免除事業に従事しているか、適用免除事業資産を有しているかにかかわらず、グループとして適用免除を選択する。その際、グループ内取引の存在は無視する。適用免除となった支払利息は連結納税グループ各メンバーに配賦分される
  • 適用免除対象となる不動産業の定義を拡大

連結納税グループ

  • 連結納税を選択しているグループは、163条(j)を連結納税グループ単位で適用する
  • パートナーシップ等が連結納税グループ内法人により合計100%保有されている場合も、連結納税グループ内法人ではない事業体の項目は連結納税グループとの合算計算を認めない
  • 連結納税グループ内の債権債務は消去する
  • 連結納税グループで損金算入制限が発生する場合、繰越支払利息は次のステップで各法人に配賦する
    【ステップ1】過年度からの繰越を加味せずに、当該年度の支払利息が連結納税グループの制限枠に抵触する場合は、ステップ2と3で当該年度の支払利息を各法人に配賦。それ以外の場合(=過年度からの繰越利息を加味して初めて制限に抵触する場合)はステップ4に
    【ステップ2】各法人レベルで当該年度の支払利息と受取利息を相殺してネット支払利息額を計算
    【ステップ3】連結納税グループベースの制限枠を、ステップ2で計算した各法人のネット支払利息額で按分して損金算入
    【ステップ4】当該年度の支払利息を損金算入した後の制限枠の余裕額を繰越支払利息の発生年度順に使用。同一発生年度内に複数の法人の繰越支払利息が存在する場合には、同一発生年度の繰越額で制限枠の使用額を按分
    【ステップ5】ステップ1~4後に制限枠に抵触している支払利息を各法人が繰り越し
  • 連結納税グループから離脱する法人に繰越支払利息が存在する場合、離脱後の当該法人の課税年度に繰り越し
  • 連結納税グループに新たに参加する法人が持ち込む繰越支払利息は、NOLに対するSRLY規定に準じ、参加後も当該法人単独で算定する枠で163条(j)を適用する
  • 繰越支払利息がSRLYと(究極の株主持分変動に伴う)382条に同時抵触する場合は、382条のみを適用する
  • 連結納税グループ内子会社の支払利息が損金算入制限に抵触する場合、株主側の子会社株式簿価は損金算入が認められる時点で調整する
  • 連結納税グループ内子会社株式の譲渡から損失が発生する際に当該子会社に繰越支払利息が存在する場合には、繰越支払利息をUnified Loss Ruleに基づき減額が求められる子会社の属性として取り扱う

米国株主が50%超の持分を保有する被支配外国子会社(Controlled Foreign Corporation、「CFC」)への適用

  • CFCが米国株主によるGILTI合算目的のTested Income、Subpart F所得、ECI等、米国税法ベースの所得計算を行う際には、原則として、内国法人と同様に163条(j)を適用する
  • 80%以上の資本関係にある関連CFCグループに関しては、CFCグループの合算支払利息が合算受取利息を超過するCFCグループのネット支払利息を各CFCに各々のネット支払利息額の比率で按分し、当該額に各CFCのATIを用いて163条(j)を適用することが選択可能。ただしECIを認識するCFCを当該選択に含むことは認められない
  • CFCレベルでATIに加味されている所得のメリット重複を防止するため、米国株主のATIは、GILTI合算、Subpart F合算、外国税額控除算定時の78条グロスアップを除いて算定する。また除外されるGILTI合算額に対応するGILTIの50%控除額も、控除の課税所得制限の有無にかかわらずATI算定から除外する

E&P(アーニングス・アンド・プロフィッツ・配当原資となる利益積立金)への影響

  • RIC及びREITに係わる特別なケースを除き、支払利息は、163条(j)で損金算入制限に抵触するか否かにかかわらず、E&P減額調整項目とする
  • 旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている支払利息が163条(j)に基づき2018年1月1日以降に開始する課税年度において損金算入される場合は、E&P減額調整項目とはしない(旧アーニングス・ストリッピング規定下で、繰延時点でE&P減額調整項目となっているため)
  • パートナーシップによりC Corporationに配賦される繰延支払利息は、配賦時点でE&P減額調整項目となるが、C Corporation側で当該繰越支払利息を未使用のままパートナーシップ持分を譲渡する場合には、譲渡時点で未使用額がE&P増額調整項目となる

パートナーシップ

  • 163条(j)はパートナーシップレベルで適用されるが、パートナーシップ持分譲渡時に発生する持分譲受パートナーに帰属するパートナーシップ資産の簿価調整(743(b)条調整)はパートナー側のみで影響を加味する
  • パートナーシップによる資産分配によるパートナーシップ資産の簿価調整(734(b)条調整)はパートナーシップ側で影響を加味する
  • 適用免除事業と他の事業の双方を有するパートナーシップの持分をパートナーが譲渡する際の譲渡損益は、パートナーシップ側の他の事業活動に対応する金額のみ、パートナー側のATIに加味する
  • パートナーシップからパートナーに配賦される受取利息は、パートナーシップ側で支払利息と相殺されていない残余受取利息の配賦額のみパートナーの損金算入限度枠を増額させる
  • パートナーシップ側で損金算入制限に抵触する支払利息、支払利息を上回る受取利息、余剰枠相当ATI(Excess Taxable Income(「ETI」)等は、原則として、通常の課税所得配賦比率に基づいて各パートナーに毎期配賦する
  • パートナーに配賦されるパートナーシップ側で損金算入制限に抵触した支払利息は、翌期以降、当該パートナーシップから配賦される超過受取利息を使用してパートナー側で損金算入することが可能
  • パートナーに配賦されるパートナーシップ側で損金算入制限に抵触した支払利息は、翌期以降、当該パートナーシップから配賦されるETIと同額をパートナー側で支払った支払利息と取り扱い、パートナーレベルの他の項目と合算して163条(j)を適用
  • パートナーに配賦されるパートナーシップ側で損金算入制限に抵触した支払利息は、翌期以降、当該パートナーシップから配賦されるETIを超過する限り、引き続き当該パートナーシップからの支払利息繰延額として取り扱う
  • パートナーに配賦されるパートナーシップ側で損金算入制限に抵触した支払利息は、パートナーのパートナーシップに対する持分の税務簿価を減額させるが、簿価がゼロとなる場合には、超過額のパートナーへの配賦はプラスの税務簿価が発生するまで繰り延べる
  • パートナーがパートナーシップ持分の全てまたは全てに近い部分を譲渡する際、パートナーシップ側で過年度に損金算入制限に抵触した支払利息の配賦を理由にパートナーシップ持分の税務簿価を減額した額のうち、ETI配賦等に基づきパートナー側で支払利息として取り扱われていない金額については、譲渡時点でパートナーシップ持分の税務簿価を増額する