EY税理士法人
ライブラリー

BEPS update
~OECD、オーストラリア、ブラジル、シンガポール、香港、韓国、タイ、米国~

Japan tax alert 2018年6月7日号

OECD

2018年5月17日、BEPS包摂的枠組みは、BEPS行動5に関連して実施した優遇税制の審査結果の更新を公表しました。同更新では、有害税制フォーラム(Forum on Harmful Tax Practices)の基準に準拠する4つの税制(リトアニア、ルクセンブルク、シンガポール、スロバキア共和国)が新たに制定されたほか、有害性があるとして4つの税制(チリ、マレーシア、トルコ、ウルグアイ)が廃止もしくは改正されています。一方、3つの税制(ケニア及びベトナムの2つの税制)が地理的に移動可能な所得と法人課税の両方又はどちらかに関係していないとされ、BEPS行動5のリスクを生じさせるリスクがないため、対象外と判断されました。税制審査結果の更新表は、OECDのウェブサイトで閲覧できます。

2018年5月9日、OECDは、移転価格ガイドライン・第4章の今後の改訂(「移転価格紛争の回避及び解決のための税務執行上のアプローチ」)及び第7章の今後の改訂(グループ内役務提供に対する特別な配慮)における対象範囲に関するコメントの募集を開始しました。関係者はTransferPricing@oecd.org宛てのEメールによりコメントを提出できます。提出期限は2018年6月20日です。寄せられたコメントはすべて公開される予定です。

2018年5月、バーレーン、セントルシア、アラブ首長国連邦(UAE)がBEPS包摂的枠組みに加わり、参加国・地域の総数は116になりました。新たにBEPS参加国となった3カ国は今後、行動5(有害な租税慣行への対応)、行動6(租税条約の濫用の防止)、行動13(移転価格文書化)及び行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)におけるミニマムスタンダードを遵守する方針です。また、他のBEPS参加国と対等の立場で、BEPSプロジェクトにおける残りの基準設定、並びにBEPSパッケージ実施のレビューやモニタリングに参加できるようになります。


オーストラリア

2018年5月8日、オーストラリアのスコット・モリソン財務相は、2018年度連邦国家予算案を発表しました。
予算案の中で発表された、法人を対象とした主な租税措置は以下の通りです。

  • 研究開発(R&D)費用の税務上の取扱いが変更されました。企業にとってはプラスとマイナス、両方の影響をもたらします。大企業を対象に集約度テスト(intensity test)が導入され、R&D集約型企業に対するインセンティブ率は最大で12.5%に引き上げられる一方、R&D集約度が最も低いレベルに属する企業に対するインセンティブ率は4%に引き下げられます。大企業に対するインセンティブ率は、現在は8.5%、以前は10%でした。
  • ビジネスのデジタル化と必要な税制改正に関し、G20諸国が行うレビューにオーストラリアが参加することについては、今後数週間以内にコンサルテーションペーパーが発表される予定です。

予算案の中で発表された主なインテグリティ措置(integrity measures)は以下の通りです。

  • 税務上・財務報告上の無形資産及び内部創出資産の評価を整合させるための過少資本インテグリティ措置が導入されます。また、アウトバウンド投資家のみを対象とした過少資本テストが適用できなくなります。
  • 管理投資信託(Managed Investment Trusts:MIT)及び帰属管理投資信託(Attribution Managed Investment Trusts:AMIT)は、信託レベルでのキャピタルゲイン税の軽減を申請できなくなります。
  • 透明性への取組みが強化され、2018年7月1より「大規模グローバル企業(Significant Global Entity:SGE)」の定義が拡大されます。その結果、より多くの企業・事業体が多国籍租税回避防止法(Multinational Anti-Avoidance Law:MAAL)、迂回利益税、一般目的財務諸表(General Purpose Financial Statements:GPFS)、国別報告書要件の適用範囲に含まれることになり、ペナルティが科されるリスクも増大します。
  • 今後、多数のブラックエコノミー措置が制定されます。例えば、所得税の源泉徴収納付制度(Pay As You Go:PAYG)を遵守しない場合、支払いの一部の損金算入が否認されます。
  • オーストラリア税務当局(ATO)による「ビッグデータ」コンプライアンスの取組みに多額の資金が提供されます。企業はATOのデータ分析力の向上に対応する準備が必要になります。

2018年5月10日付EY Global Tax Alert、「Australia issues 2018-19 Federal Budget」をご参照ください。


ブラジル、シンガポール

2018年5月7日、ブラジルとシンガポールは、所得に関する租税条約に署名しました。同条約には、BEPSプロジェクト行動6(不適切な状況での租税条約の特典付与の防止)における租税条約に関する多くの提言が含まれています。

例えば、新たな序文で、租税条約は脱税又は租税回避を通じた二重非課税又は課税の軽減を生じさせるために利用されることを意図したものではないことを明確にしています。また、特典制限(LOB)条項と主要目的テスト(PPT)が盛り込まれています。


香港

2018年5月14日、香港政府は、以前に提出した移転価格文書化に対する3層構造アプローチの導入に関する法案の修正を提案しました。中でもマスターファイルとローカルファイルの作成について、いくつかの譲歩が示されました。具体的には、(i)税額に影響しない国内取引の報告免除、(ii)報告基準値の緩和(①年間総収益が4億香港ドル以下、②総資産が3億香港ドル以下、③従業員数が100名以下、のいずれか2つの条件を満たす納税者に対する報告免除)、(iii)作成期限を法人の会計年度終了後9カ月以内に延長、などを挙げています。修正法案は、審議のため香港立法会に提出されました。


韓国

2018年3月12日、OECDは、BEPS行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)ミニマムスタンダードの実施状況に関して、第三グループの相互審査(ピアレビュー)報告書を公表しました。韓国は、第三グループに属する評価対象国の1つです。

報告書は、韓国が全体として行動14ミニマムスタンダードの要素のほぼすべてを満たしていると結論づけています。相互審査プロセスの次の段階(ステージ2)では、ステージ1の相互審査報告書において指摘された問題点に対する韓国の取組みがモニタリングされます。

2018年5月16日付 EY Global Tax Alert, 「OECD releases Korea peer review report on implementation of Action 14 minimum standard」をご参照ください。


タイ

2018年5月13日、(ⅰ)デジタル資産事業、並びに(ⅱ)デジタル資産から稼得した特定の所得に対するタイでの税務上の影響に関する法律(以下「同法」)を制定するための2つの緊急勅令が、タイ政府官報によって公布されました。同法は、2018年5月14日に施行され、デジタル資産に関連する事業の統制及び規制を目的としています。背景として、仮想通貨やデジタルトークンが、公に資金調達を行うためのツールや交換及び同様の活動の媒体として使用されることが多くなったことがあります。同法に違反したデジタル資産事業者には、懲役もしくは罰金、又はその両方が科されます。また、デジタル資産から生じる所得は、他の通常所得と同様の方法でタイにおいて課税されます。国外の者が受領するデジタル資産に係る所得は、一般に15%の源泉税の対象となります。 

2018年5月21日付 EY Global Tax Alert、「Thailand enacts emergency decrees on digital assets」をご参照ください。


米国

内国歳入庁(IRS)は2018年5月14日と16日に、国別報告書の自動的交換のための当局間合意(Competent Authority Agreement:以下「CAA」)を米国と締結した国のリストにリヒテンシュタインとモーリシャスをそれぞれ追加しました。IRSは、米国とすでにCAAを締結した国、並びにCAAの締結に向けて交渉中の国の最新のリストをホームページに掲載しています。IRSは現在、他の9カ国とCAAの締結に向けて交渉を進めており、締結に至った際にはホームページを更新すると思われます。