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ロシア、二国間及び多国間APAの手続を正式に公表

Japan tax alert 2018年5月22日号

エグゼクティブ・サマリー

2018年5月3日、二国間及び多国間の事前確認制度(Advanced PricingAgreement、以下、「APA」)の処理プロセスを定めた手続(Procedure)が、ロシアで公表されました。

この手続は、一カ国以上の外国の権限ある当局による関与を伴うAPAの締結の実務的な枠組みを提供するものであり、2018年6月4日に施行されます。


詳細解説

概要

ロシア財務省は、租税条約締結国の権限ある当局と相互協議(MAP、Mutual Agreement Procedure)を行うために、二国間及び多国間のAPAに関する権限を連邦税務局(FTS)に委任しました。

二国間又は多国間のAPAは、「大規模納税者」の基準を満たすロシア法人のみが利用可能です。

手続は、以下に挙げるAPAプロセスの各段階を規定します。

FTSとの事前相談

一般的に、この段階は非公式のものです。事前相談の結果は、納税者又はFTSに対し拘束力を持ちません。事前相談の結果にかかわらず、納税者はFTSにクロスボーダー取引に関してAPAの締結を申請することができます。

正式な申請

手続には、APAプロセスを正式に開始するために必要な申請書の推奨様式と書類の一覧が含まれています。

FTSが他国の権限ある当局との協議を開始するためには、正式なAPA申請書を両国の権限ある当局に提出する必要があります。

FTSによる納税者の申請書の審査

この段階で、FTSは提出された文書を検討し、納税者と議論を行います。また、この段階ではFTSによる内部レビューも想定されています。しかし、事案によって適切な場合には、FTSは外国の権限ある当局と相互協議に入ることもあります。

結果として、FTSは次のいずれかを選択します。

  • (ⅰ)権限ある当局間の協議開始
  • (ⅱ)APAの修正を提案
  • (ⅲ)APAの却下

権限ある当局間の協議

APA締結の過程における重要な段階は、FTSと外国の権限ある当局との間の協議の実施で、その結果、相互の合意が締結される可能性があります。

この段階で、FTSは納税者から追加の説明を要請することがあります。

権限ある当局の相互協議合意の実施

相互協議合意書の写しは、納税者に提供されませんが、納税者とAPAに署名するための基礎として使用されます。FTSと外国の権限ある当局との間で相互協議が合意に至った場合、FTSは、相互協議で合意された条件でAPAの締結を納税者に勧めるか、又は相互協議の合意を遵守するためにドラフトAPAを修正するよう納税者に勧めます。納税者が同意する場合は、APAが締結されます。


今後の影響

手続の導入は、経済協力開発機構(OECD)の税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画の、とりわけ、行動14で推奨されたような、移転価格係争の防止を目的とした実用的なメカニズムを可能にするはずです。実際に手続がどのように実施されていくかはこれからの展開を待つことになります。

注目すべきは、最初の積極的な取組みのいくつかがすでに立法において実施されていることです。2017年12月29日より、独立企業原則に基づくことを条件に、クロスボーダー取引に関する二国間又は多国間のAPAが存在する場合は、ロシアの課税ベースが減額されることになりました(これは以前は不可能でした)。

同時に、独立企業原則の基準は、ロシア税法とOECD移転価格ガイドラインとのどちらを参照するか、などのいくつかの疑問も残されています。OECD移転価格ガイドラインの方が、一定のコンセンサスを可能にするので好ましいシナリオかもしれません。


※本アラートの全文は、下記PDFからご覧ください。


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