EY税理士法人
ライブラリー

湾岸協力会議(GCC)諸国におけるVAT導入と法律事務所への影響

Japan tax alert 2017年12月20日号

エグゼクティブ・サマリー

サウジアラビア財務省の高官は、湾岸協力会議(GCC)の付加価値税(VAT)枠組協定の承認及び公示を経て、サウジアラビアVAT施行規則を公布し(2017年8月29日に官報に掲載)、VATの導入を確認しました。

これに続き、アラブ首長国連邦(UAE)は、租税手続に関する2017年連邦法第8号を公表しました1。連邦法第8号は、税務行政及び租税徴収に関する規定を定めるとともに、UAE連邦課税庁の役割を明確に定義しており、今後のUAE税制の基礎を成すものです。

こうしたサウジアラビア政府とUAE政府の動きは、バーレーン、クウェート、オマーン及びカタールの政府高官が示した見解と一致しています。

これらの動向に鑑みて、事業者は2018年1月1日のサウジアラビアとUAEにおけるVAT導入に備える必要があります。つまり、法律事務所のVAT導入に対する準備期間は短く、その間に上記GCC各国のVAT法の遵守を確保する必要があるということになります。

詳細

GCCのVAT枠組協定とサウジアラビアのVAT施行規則の主要ポイント

  • ゼロ税率あるいは免税が適用されない限り、標準VAT税率は5%となります。
  • ある加盟国のVAT登録事業者による他の加盟国のVAT 登録事業者に対する物品及びサービスの供給は、リバースチャージ方式の対象となります。
  • GCC自由貿易地域(フリーゾーン)の取扱いについては言及されておらず、フリーゾーンにおけるVATの取扱いは、各加盟国の決定に委ねられています。
  • 年間売上額が37万5,000サウジアラビア・リヤル(約10万米ドル)を超える企業は、強制的なVAT登録が義務付けられます。
  • 年間売上額が、18万7,500サウジアラビア・リヤル(約5万米ドル)以上37万5,000サウジアラビア・リヤル以下の企業は、自主的にVAT登録をすることができます。
  • 海外で設立された企業が、特にGCC域内の最終消費者に対する課税取引を行う場合は、その取引額にかかわらずVAT登録が必要です。
  • 国外のVAT登録事業者は、各加盟国における一定条件の下、税務代理人の選任、又は管轄当局に直接VAT登録を行うことができます。
  • サウジアラビア税務当局は、GCC枠組協定が規定する四半期ごとの申告とは対照的に、一定条件の下で、月次のVAT申告書の提出を義務付けるとしています。

UAEの最新情報

UAE連邦政府は、VAT法を承認し、公布しました。

VAT法の注目すべき点は、以下のとおりです。

施行日 - 第85条の規定により、VAT法は2018年1月1日に施行します。

課税の範囲 - 第2条によると、課税対象の供給(みなし供給を含む)及び「対象物品(concerned goods)」の輸入はすべてVATの課税対象となります。「対象物品」とは、UAE内で供給される場合は非課税対象とならない輸入品を意味します。「対象物品」に関するVATの取扱いについては、施行規則(Executive Regulations)に規定されます。

税率 - 第3条によると、標準税率5%は物品及びサービスの供給だけではなく輸入に対しても課せられます。一方、ゼロ税率や非課税が適用される特例もあります。

登録 - 第13条に基づき、物品及びサービスの供給額が施行規則に規定される登録基準額を超える(又は超えると予測される)場合、UAE居住者はVAT登録が義務付けられます。VATの導入が予定されているGCC加盟国の居住者ではない者がUAE内で物品やサービスを供給し、他の者が当該供給に係るVATの申告義務を負わない場合には、VAT登録が義務付けられます。

ゼロ税率が適用される供給のみを有する事業者は、税務当局に対しVAT登録の免除申請を行うことができます。

また、施行規則に規定される任意登録のための基準額を12カ月間以内に超える、又は超えることが予測される場合は、第17条に基づき、任意でVAT登録を行うことができます。

UAEでビジネスを行う複数の事業者が互いに関連者であり、各事業者がUAE内に拠点を有し、またすべての事業者が共通の支配下にある場合は、「タックスグループ」として登録することができます。

関連者間の供給 - 関連者間における供給の価額が時価を下回り、かつ、その受益者が仕入税額控除の権利を有さない場合は、当該供給価額は時価とみなされます。

物品及びサービスの価格設定 - 広告表示価格は、施行規則に定める条件を満たす場合を除き、税込価格とする必要があります。

ゼロ税率が適用される供給 - ゼロ税率が適用される供給として、14の例が挙げられており、その中には、輸出、国際輸送、金属投資、住宅建物の初回引渡し(竣工から3年以内の引渡しの場合)、原油及びガスが含まれます。教育サービスの他、予防的・基本的医療サービス及びその関連物品・サービスも、施行規則に準拠している場合には、ゼロ税率が適用されます。

フリーゾーン - 課税事業者間における指定地域内での物品の供給にはVATが課されません。施行規則において適用される手続き及び条件が定められます。

タックスインボイス - タックスインボイスは供給が行われた日 から14日以内に発行されなければなりません。供給価額がUAEディルハム以外の通貨建ての場合には、供給日時点において中央銀行が承認する為替レートを用いてUAEディルハムに換算する必要があります。

不良債権 - 不良債権の貸倒償却が生じた場合、物品・サービスの供給時にVATの請求及び支払いが行われ、供給日から6カ月以上経過しており、また供給者が受益者に対し貸倒償却額を通知していることを条件に、翌課税期間に納付税額を減額することが認められます。

施行規則において、以下の項目に関する具体的なガイドラインが規定されます。

  • VAT登録基準額
  • 供給地に関する特定ルール
  • 利益率スキーム
  • リバースチャージ方式に関する条件及び義務
  • 指定地域の定義
  • 非課税の金融サービス
  • タックスインボイスの記載要件
  • 税務申告書の記載内容、様式、及びその諸条件
  • タックスインボイスと税務申告書における調整
  • 課税期間
  • 割当て
  • 固定資産スキーム
  • VAT納付及びその他の支払い
  • 2017年12月31日以前に締結される契約に基づき行われる供給の一部又はすべてが2018年1月1日以降に実施される場合の経過措置規定

VATに対する事前準備 - 国際法律事務所

EYのGCC地域に拠点を置く企業に関する経験上、2018年のVAT導入について企業は十分な認識を有しています。多くの企業は、VATの事業活動全般に対する影響の評価をすでに開始又は完了しており、現在は主要分野における明確な実施計画の策定に取り組んでいます。

GCC域外に本社を置きながら、GCC域内で事業上の取決めを行っている多くの企業は、VATの固定的施設(fixed establishment)ルールに基づく課税対象となる拠点をGCC域内に有する可能性があります。

登録

VATが国際法律事務所に及ぼす影響を過少評価すべきではありません。GCC枠組協定、サウジアラビアの施行規則及びUAEのVAT法に関する最新情報に鑑みると、GCC域外で事業を行う法律事務所がGCC域内で業務上の取決めや取引を行っている場合、GCC域内におけるVAT登録義務を負う可能性があります。具体的には、法律事務所がGCC加盟国内で課税供給を行う場合、VAT登録の基準額は「ゼロ」になります(供給額に関わらず登録が必要となります)。

VATの課税範囲とフリーゾーン

UAEは指定地域(ドバイ国際金融センターを含む)に関する特別規定を検討していますが、現在のところ、指定地域に登録されている法律事務所もVATの適用対象となる点に留意が必要です。

事業コストとしてのVAT

法律事務所は、VAT登録に加え、2018年初めのVAT導入後に各GCC加盟国内で事業を行うコストを再評価する必要があります。重要な考慮事項の1つに、VAT登録をしている現地の下請け業者やサービスプロバイダーからの購入に対して請求されるVATがあります。VATの仕入税額控除制度は、GCC域内でVAT登録をしている法律事務所のみが利用できます。その結果、法律事務所がVAT登録を行っていない場合、仕入税額の控除ができず、支払ったVATを費用計上する必要があります。

コンプライアンスと罰則

GCC枠組協定とサウジアラビアの施行規則において、VATコンプライアンス違反に対する罰則は厳しいものになることが想定されます。コンプライアンス違反に対する罰則は以下の場合に科される可能性があります。

  • VAT登録の基準額を上回っているにも関わらず登録を行わない場合
  • 要求されている記録及びその他の情報を保持しない場合
  • 不正確なVAT申告
  • VAT申告の遅延
  • 脱税

上記のリストは網羅的なものではない一方で、一部のGCC加盟国において四半期ごとの申告ではなく月次のVAT申告が導入されることにより、VATの報告において誤りが生じるリスクが高まっています。したがって、法律事務所は、VAT遵守責任の管理方法を慎重に検討することが不可欠です。

  1. 2017年8月3日付 EY Global Tax Alert「UAE issues landmark Federal Law on tax procedures」(英文のみ)をご参照ください。

Japan tax alert 2017年12月20日号をPDFでDownload (188KB)