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カンボジア、移転価格コンプライアンス新ルールと文書化要件を発表

Japan tax alert 2017年11月1日号

移転価格に関する省令の発表

カンボジア租税総局(以下、「租税総局」)は、移転価格ルールに関する新たな省令(以下、「本省令」)を発行しました。本省令は、国外関連者間取引を行うカンボジアの納税者に対し、利益移転の防止のため、カンボジア納税者と国外関連者間の収入と費用の配分に関するを指針を定めています。本省令は2017年10月10日より発効しました。

OECD移転価格ガイドラインと独立企業原則

本省令はカンボジアの納税者と国外関連者間の取引における移転価格の算定と検証のための独立企業原則に準拠しており、経済協力開発機構の移転価格ガイドライン(OECDガイドライン)に基づいています。影響を受ける納税者は、関連者間取引が第三者と締結されたものと同じように、関係する価格、条件を設定することが求められます。本省令の「関連者」の定義は、租税法(Law on Taxation)の既存の定義と整合しています。したがって、本省令は、カンボジアの居住者である納税者どうしの国内取引にも適用される可能性があります。

OECDの5つの承認された移転価格算定方法の受入れ

本省令は、OECDで認められた5つの移転価格算定方法のすべてが租税総局で容認されていることを確認しています。したがって、カンボジアの納税者は、関連者間取引を独立企業間価格に基づいて算定し、それを検証する際にこれらの算定方法の1つ以上を使用すべきです。5つの算定方法には取引ベースの方法と利益ベースの方法があり、次のものがあります。

取引に基づいた算定方法 利益に基づいた算定方法
  • 独立価格比準法
  • 再販売価格基準法
  • 原価基準法 取引
  • 単位営業利益法
  • 取引単位利益分割法

内部比較対象(内部コンパラ)の使用

同様の製品及び/又はサービスについて、関連者間及び第三者取引の両方を有する納税者は、関連者間取引の独立企業間価格を検証するための内部コンパラがあるかどうかを確立するよう推奨されています。本省令には、関連者間取引の最低基準値が示されていません。

コンプライアンスと報告の要件

移転価格文書の維持は強く推奨され、納税者は外部又は内部コンパラの使用に基づくベンチマークスタディを参照して、関連者間取引の独立企業間価格を検証し、毎年文書を更新することが求められています。ベンチマークプロセスの手順と結果は、OECDに準拠した移転価格文書として文書化する必要があります。租税総局は地域の他の国と同様のBEPSアソシエートプログラムに参加する可能性があるとみられることもあり、移転価格文書は税源浸食と利益移転(「BEPS」)報告書の行動13の指針に合わせる必要があるでしょう。

また、租税総局は、納税者が作成する別個の移転価格開示書類を導入し、年次法人所得税申告書とともに提出させるよう計画しています。この書式では納税者が当該年度中に行ったすべての関連者間取引の内訳を記載することが義務化される可能性があります。その他の開示には、課税年度中に納税者が行った各関連者間取引の価格と価値、及び関連者間取引の独立企業間価格を検証するために用いた方法が含まれる可能性があります。

コンプライアンスと租税総局のリスク評価

本省令で具体的に取り上げられていませんが、以下が問題となる可能性が懸念されます。

国内の比較可能なデータの欠如: 納税者が独立した比較可能会社を特定する際に、独立した企業の財務データへのアクセスがカンボジアではできないため、納税者は比較対象の調査をASEAN地域内の他の国にまで拡張せざるを得なくなります。この方法は、ASEAN地域の税務当局によって一般的に受け入れられているアプローチですが、カンボジアの税務当局がこの方法を採用するかどうかは確認しておらず、不確定要素をもたらしています。

企業全体又は個別の取引分析: 租税総局が納税者に対し、個々の関連者間取引の独立企業間価格を文書化することを要求するか、または合算したもの、もしくは企業がコンプライアンスを遵守しているというアプローチを受容するのかどうかは不明です。

公表されていない比較対象(シークレットコンパラブル)の使用: 租税総局は、一般に公開されていない情報にアクセスすることができます。このような非公開情報は、他の企業の移転価格規則の遵守を評価するための基礎として使用されないことが重要です。このデータは、すべての納税者には利用できないためです。

移転価格規則では標準的ですが、本省令では、租税総局は、納税者の関連者間取引の独立企業間価格に用いた算定方法を、租税総局がより適切であるとみなす自らの算定方法に置き換える可能性があるとしています。

本省令遵守の不履行

本省令には、租税法に盛り込まれた以下のペナルティ条項が記載されています。これらは、本省令を遵守していないと判明した場合、納税者に適用される場合があります。

  1. 納税者の税務コンプライアンス証明書の撤回、これにより納税者はミニマム税の免税を失う可能性があります
  2. 要求された書類を提出しないことによる法の実施妨害への金銭的ペナルティ
  3. 納税者が刑事責任を問われる可能性(懲役又は罰金)
  4. 独立企業間価格への調整による過少納税の潜在的な延滞利子

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