EY税理士法人
ライブラリー

オランダ新政府が税制改革案も含めた連立政権合意書を発表

Japan tax alert 2017年10月18日号

エグゼクティブ・サマリー

2017年10月10日、オランダ新政府は政策文書(the Paper)を発表しました。 政策文書には、今後4年間で実施されるオランダ新政府の政策概要がまとめられています。 2017年3月15日に総選挙が行われて以来、長期にわたる交渉を経て4党による連立政権が発足したオランダ新政権では、現首相のルッテ氏が続投するとみられています。

この税制改革案の目的は、企業に対して競争力ある税制上の投資環境を提供し続けることにありますが、同時に、経済協力開発機構及び欧州連合(EU)の勧告に従って、租税回避の現状に対応するためでもあります。 この対策には、租税回避対策指令(ATAD)及びEUが本年末に公表予定としているEU非協力国ブラックリストへの対応が含まれています。

本アラートでは、オランダ法人所得税法及びオランダ配当源泉徴収税法に関するオランダ新政権の計画を解説しています。

詳細解説

オランダ法人所得税率の引下げ

新政権は、オランダ法人所得税基本税率を2019年には現状の25%から24%に、2020年には22.5%に、2021年以降は21%に引き下げる案を示しています。 現在、課税所得20万ユーロ未満は、ステップアップ税率による軽減税率20%が適用されていますが、新政権の改訂案では、2019年に、この税率20%を19%に引き下げ、2020年には17.5%、さらに2021年以降は16%にまで引き下げるとしています。

オランダ配当源泉徴収税の廃止

政策文書には、配当にかかる15%の源泉徴収税を廃止する計画が盛り込まれています。 ただし、濫用的な状況下及び軽課税地域での配当においては、源泉徴収税の課税対象となることがあります。

現在の法律上は、有限責任会社(つまり、BV(非公開会社)及びNV(公開会社)) による配当には、原則として配当源泉税15%が課税されますが(同時に、各種条約、EU法令、国内法令に基づき減税や免税の適用になることもある)、協同組合による配当に対しては、一定の濫用的状況を除いては、配当源泉税は課されないことになっています。

最近、オランダ財務省は2018年度の税制予算案1を発表しました。この予算案には、オランダ配当源泉徴収税法について以下の2つの改訂が含まれています。

  1. 国内配当にかかる源泉税の免税範囲を拡大します。 対象は、EU及び欧州経済地域(EEA)、又は、配当を含めた租税条約をオランダと締結している国の居住者に対する配当の支払いとし、具体的な濫用防止規定の導入と併せて実施します。
  2. 持ち株会社や金融会社としての運営を主とする協同組合(運営全体の70%以上)をBVやNVと同様に取り扱います。

現段階では、ある一定の条件下においてオランダ協同組合の配当に原則としてオランダ配当源泉税が課されることになる2018年度の予算案が、どのような形でオランダ配当源泉徴収税を廃止する旨の発表に関連してくるかは明らかではありません。 このため、既存の協同組合の構造を見直し、2018年度予算案による影響を検討するよう強くお勧めします。

利子及びロイヤルティへの源泉徴収税

現在、オランダは利子やロイヤルティに対し源泉税を課していません。 オランダ新政権は、オランダ人納税者が軽課税地域へ利子やロイヤルティを支払う際に源泉徴収税を徴収する計画をしています。 これは、非協力な税制を有する国のブラックリストを年末までに作成するため、EUレベルで実施されるイニシアチブの一貫として行われる可能性があります。

金利控除上限についての規定

2019年1月以降のATADによる過大支払利子税制(アーニング・ストリッピング・ルール)の実施に関する内容が共有されました。 政策文書には、正味借入費用は、(1)納税者の金利、税金、減価償却前利益(EBITDA)の30%、又は、(2)100万ユーロのいずれかまでに限り税額控除可能であると記載されています。 新政権は、グループ比率免税は含まないと明確に述べています。 さらに、会計上の貸借対照表における負債資本総額の92%を超える負債にかかる支払い利息を制限する過少資本税制がこの政策文書に含まれています。

同時に、新政権は、オランダ法人所得税法第10a条の税源浸食防止ルールを除き、オランダで適用されている既存の利子控除制限規定を廃止することを提案しています。

繰越欠損金補償の制限

現在、税務上の欠損金は9年間にわたる繰り越し、及び/又は1年間の繰り戻しができます。オランダ新政権は、この繰越し可能年数を9年から6年に制限する計画です。

イノベーションボックス税制実効税率の引上げ

知的財産に関する優遇税制であるオランダのイノベーションボックス税制の下では、現在、認定された研究開発活動からの利益に対し5%の実効税率を認めています。 新政権下においては、この実効税率が7%に引き上げられる予定です。

次のステップと時期

政策文書を正式な法案として捉えることはできませんが、今後予定される正式な立法手続きへの青写真と考えるべきです。

予想される影響

オランダ法人所得税率の引き下げ及びオランダ配当源泉税廃止は、企業にとって、同国の金融投資環境のさらなる強化に向けた重要なステップと捉えることができます。 同時に、オランダが国際的租税回避を標的にしたイニシアチブを継続的に支持していくことの現れでもあります。


Japan tax alert 2017年10月18日号をPDFでDownload (147KB)