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2017年10月8日より実施される輸出入申告官署の自由化について

Japan tax alert 2017年10月6日号

2017年10月8日から輸出入申告官署の自由化が実施されます。輸出入申告は原則として貨物が蔵置されている保税地域等の所在地を管轄する税関官署(蔵置官署)に対して行う必要がありますが、今回の自由化により、AEO認定事業者のうち特定輸出者、特例輸入者及び特定通関業者については、特例として蔵置官署以外の任意の税関官署(申告官署)への申告を行うことが可能となります。今回の輸出入申告官署の自由化はAEO認定事業者のみを対象としたものですが、輸出入者自身がAEO認定を受けていなくとも、AEO認定を受けた通関業者に申告業務を委託することにより自由化の恩恵を受けることが可能です。

AEOとは:
AEOとはAuthorized Economic Operatorの略で、「貨物のセキュリティ」や「法令遵守」を確保するための体制が整備されていると税関に認定された事業者をいいます。 日本には、輸入者、輸出者、製造者、通関会社、運送会社、倉庫会社向けのAEO制度があり、AEO認定を受けた事業者は、税関手続の簡素化・迅速化等の利便性を享受することができます。

今回の自由化における実用的・手続的な事項は、以下の通りです。

1. 自由化の対象とならない貨物

下記を除くすべての貨物が、申告官署の自由化の対象となります。

  • MDA協定(日米相互防衛援助協定)該当貨物
  • 輸出貿易管理令に基づく武器関連物資

なお、ワシントン条約該当貨物及び特定外来生物の輸入も自由化の対象とはなるものの、蔵置と申告共に当該貨物の取扱いが認められている指定官署で行う必要があります(一部制限有り)

2. 複数の蔵置場所に分散して置かれる貨物の取扱い

輸出入申告は、原則として蔵置場所ごとに、当該蔵置場所を所轄する税関官署に対して行う必要があります。 しかしながら、今回の自由化に伴い、一つの申告官署に申告できるようになると同時に下記の条件を充足する場合には、一つの申告により通関を行うことが可能となります。

  1. 貨物の蔵置場所が一つの税関の管轄区域内かつ都道府県をまたがない範囲に所在していること
  2. 税関による審査及び検査において事務の執行上支障があると認められないこと、かつ
  3. 一つの申告により通関することが必要と認められること

3. 修正申告書及び更正の請求の提出先/関税等の軽減、免除又は払戻し等を受けるための書類等の提出先

修正申告と更正の請求や、関税等の軽減・免除又は払戻しを受けるための書類等の提出は申告官署宛てに行うことになります。 ただし、地方消費税(8%のうち、2.2%)の支払いと払戻しは、貨物のある蔵置官署宛てに行うこととなります。

4. 一括担保の提出先/税関事務管理人の届出先

納期限の延長等のため担保を提供する場合や、非居住者が輸出入を行うために必要となる税関事務管理人の届出は、従来通り申告官署に対して行う必要があります。

5. 申告官署と蔵置官署が異なる場合における検査と審査について

認定事業者が輸出入申告を行った場合、今回の自由化に伴い輸出入申告貨物が蔵置されている蔵置官署と輸出入申告書を提出する申告官署とが異なる場合が考えられます。 原則として申告に係る貨物の検査、確認、分析に使用するためのサンプル採取、知的財産侵害疑義物品に係る認定手続きは、蔵置官署において実施されます。 しかし、例外的に、申告官署に貨物を持ち込んで貨物確認を受けることも認められています。

6. その他手続に関わるポイント

(1)申請媒体について:輸出入港関連処理システム

認定事業者が10月8日以降に非蔵置官署に輸出入申請を行う場合は、輸出入港関連情報処理システム(NACCS)を用いなければなりません。

(2)通関業者の営業区域制限の撤廃

従来は、通関業者は通関業の許可に係る税関の管轄区域外において通関業務を行うことは認められていなかったところ、輸出入申告官署の自由化に伴い、当該区域制限が撤廃されます(AEO認定を受けた特定通関業者に限らず、すべての通関業者が対象となります)。

7. AEO事業者になる利点

前述の通り、申告官署の自由化制度を利用するためには、自らがAEO事業者の認定を受けるか、AEO認定を受けている通関業者に輸出入申告を委任する必要があります。 AEO輸出入者に認められる具体的な恩恵は、以下の通りです。

(1)AEO輸入者(特例輸入申告制度)

  • 貨物が本邦に到着する前に輸入申告を行い、輸入の許可を受けることが可能
  • 輸入申告時に納税に関する申告項目を軽減
  • 輸入申告時の納税のための審査・検査を軽減
  • 関税等の納税申告と納税を後日一括して行うことが可能

(2)AEO輸出者(特定輸出申告制度)

  • 貨物の保存場所又は船積み予定港の管轄税関長への輸出申告が可能
  • 保税地域への搬入を省略し、貨物が自社倉庫等にある状態で輸出許可を受けることが可能

(3)その他のメリット

  • AEOの相互承認を行っている国との貿易では、相手国における税関手続についてもリスクに応じて書類審査や貨物検査の負担が軽減
  • リードタイム及び物流コストの大幅な削減
  • 企業の信頼性向上による顧客獲得
  • 国際的認知による国際競争力の強化

一方で、AEO認定を受けるためには①取扱貨物の安全確保(セキュリティ管理)及び②税関手続き等に関する法令の順守(コンプライアンス遵守)が要件となります。

(1)セキュリティ管理について

輸出入商品の輸送・保管に関して「盗難」、「すり替え」のほか「差し込み」の3つの脅威を排除するために、以下を整備することが要求されます。

  • 物理的セキュリティ(動線管理、コンテナ管理等)
  • 人的セキュリティ(人的管理、業務委託先管理等)
  • 情報セキュリティ(情報管理)

(2)コンプライアンス遵守について

法令順守規則(CP)の整備として、以下の点から事故等が発生しにくく、仮に事故等が発生したとしても自ずと所管官庁に報告がされ、再発防止策を講ずる体制を整備することが要求されます。

  • 体制整備(責任体制の明確化・報告連絡体制・原因究明体制等)
  • 法令遵守・適正な業務遂行(基本的業務手順の明確化・業務委託先の指導・帳簿書類等の保存・教育研修体制の整備等)

従来から通関の前倒しや税関審査・検査の軽減等によるリードタイムの削減等、AEOの認定により得られるメリットはあったものの、AEO認定を取得するために必要となる手続や体制の維持管理の負担等から、AEOの取得に積極的ではなかった輸出入者も少なくなかったのが現状です。 今回輸出入申告官署の自由化に伴いAEO認定のメリットが増えたことは、このような輸出入者にとってAEO取得を再考する好機といえます。


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