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OECDが国別報告書の実施に関する追加指針を公表

Japan tax alert 2017年9月21日号

エグゼクティブ・サマリー

2017年9月6日、経済協力開発機構(OECD)の税源浸食と利益移転(BEPS)に関する包括的枠組みは、国別(CbC)報告書(BEPS行動13)の実施と運用に関して、税務当局と多国籍企業(MNE)により高い確実性を提供するために2つの指針を発表しました。

国別報告書(CbC報告書又はCbCR)実施に関する現行の指針の更新版(以下、「本実施指針」)は、新たに3つの疑問点に対処しています:(i)収入の定義(2017年4月の更新版ですでに提供されている定義を補足)、(ii)短い会計期間にかかるMNEグループの取扱い、(iii)未払所得税及び支払所得税の取扱い。

本実施指針に加えて、OECDは、CbC報告書に含まれる情報の適切な使用に関する税務当局に対する指針(以下、「適切な使用指針」)を公表しました。これには、「適切な使用」の意味、適切な使用条件を遵守しなかった場合の結果、CbC報告書情報の適切な使用を確保するために税務当局が取り得るアプローチに関する指針が含まれます。

どちらの指針も英語版とフランス語版で入手できます。

詳細解説

2016年6月にOECDは、BEPSプロジェクトの行動13におけるCbC報告書に関する追加指針を公表しました1。 OECDは、その後、2016年12月2、2017年4月3、2017年7月4に指針を更新しました。

2017年9月6日に、1つの論点がさらに明確になり、2つの追加論点が指針に追加されました。これには次のものが含まれます:(i)収入の定義、(ii)短い会計期間にかかるMNEグループの取扱い、(iii)未払所得税及び支払所得税の取扱い。

収入の定義

本実施指針は、財務諸表がCbCRテンプレートを完成させるための情報源として使用された場合、適用会計基準に従って作成した財務諸表に示される収益、利益又はその他の収入をすべてCbC報告書の図表1の収入として報告することを明確にしています。例えば、適用会計基準に従って作成した損益計算書が、売上高、資産の売却による純譲渡益、未実現利益、受取利息、及び特別利益を示している場合、損益計算書に計上したこれらの項目の金額は、合算して図表1の収入として報告する必要があり ます。

しかし、貸借対照表の純資産及び資本の部に反映された包括利益、再評価、及び/又は未実現利益は、図表1の収入として報告されるべきではありません。最後に、OECDは、損益計算書に表示されている収入項目の金額を正味金額から調整する必要はないことを明らかにしました。

短い会計期間にかかるMNEグループの取扱い

CbC報告書の提出義務が適用される場合、グループの最終親会社(UPE)は、グループのために各国の税務当局にCbC報告書を提出する必要があります。CbC報告書の提出期限は、当該グループの報告会計年度の末日から12カ月以内です。

2016年1月1日以降に開始され、2016年12月31日より前に終了する短い会計期間のMNEグループに経過措置が適用可能かどうかという問題について、本実施指針は短期間のMNEグループの報告事業体が2016年12月31日に終了する会計年度のMNEグループと同じ日程に従って、必要なCbCRを提出することを税務管轄地が認めることができるとしています。CbC報告書の交換日も延長される予定です。

未払所得税及び支払所得税の取扱い

CbC報告書に含める税金関連情報については、CbC報告書の図表1には、MNEグループに、税務管轄地ごとに以下の合計額を含める必要があります。(i)支払われた所得税(現金ベース)及び(ii)発生した所得税-当年度。本実施指針は、これらの項目を明確化し、また、「当年度未払所得税」及び「支払所得税(現金 ベース)」を個別に報告すべきであることを再確認しました。

「当年度未払所得税」に関して、OECDは、実際に税金が支払われたかどうかにかかわらず、該当する税務管轄地において税務上の居住者であるすべての構成事業体の報告会計年度の課税利益又は損失により計上された未払法人税費用の金額にこの項目が関連することを再確認しました(例えば、仮の税務更正に基づいて)。

「支払所得税(現金ベース)」は報告会計年度に実際に支払った税金の額と定義されており、これには当該年度の租税債務を果たす前払金だけでなく、当該税金の支払いが異議の下で行われたかどうかにかかわらず、前年度の租税債務の支払いも含む必要があります(例えば、前年度の再更正に関連する支払いも含む、前年度に関連して発生した法人所得税の未払残高の支払い等)。

最終的に、本実施指針は、支払った所得税の還付金をCbC報告書の図表1にどのように報告すべきかを明確にしています。 一般的に、これは還付金を受領した報告年度の「所得税の支払額(現金ベース)」に報告する必要があります。ただし、還付金が該当する会計基準の下で、又は図表1を完成するために使用されたデータの情報源において、MNEグループの収入として扱われている場合には、例外が認められます。このような場合、経過措置期間の間、納税者は、図表3に以下の追加情報 を自主的に掲載することが奨励されます。「税還付金は収入で報告され、支払所得税(現金ベース)では報告されていません」

適切な使用に関する指針

税務管轄地がCbC報告書を入手し使用するかどうかは、CbCR情報を適切に使用することを条件としています。この点で、適切な使用は次のものに限定されています。

  • ハイレベルの移転価格リスク評価
  • 他のBEPS関連リスクの評価
  • 適切な場合は、経済的及び統計的分析

適切な使用指針は、以下についての定義とさらに詳しい説明を提供しています:(i)適切な使用の意味、(ii)BEPS関連リスクの意味、(iii)適切な使用条件を遵守しなかった場合の結果、(iv)CbCR情報の適切な使用を確保するためのアプローチ。この指針は税務当局を対象としていますが、税務当局がCbCRに関する手続きを現在どのように組織し、今後どう組織していくと見込まれるか、どの目的のために報告書が使用されるか、不適切な使用の結果はどうなるかについての洞察をMNEに提供しています。

適切な使用の意味

適切な使用ガイダンスでは、OECDは、CbC報告書に含まれる情報はハイレベルの移転価格リスク評価に使用することはできますが、これ自体を移転価格の調整の提案や、グローバルの按分計算式を使用して納税者の所得を調整するための基礎として使用するべきではないとしています。しかし、税務当局がCbCR情報を、税務調査の計画に使用したり、税務調査の過程でグループの移転価格体制やその他の税務問題について質問するための基礎として使用することを妨げるものはないとOECDは説明しています。実際、このような質問は、CbCR情報の使用を通じて特定される潜在的なリスクに特に関連する必要はありません。

さらに、行動13の報告書はこれに関する指針を含んでいませんが、CbCR情報は、適切な場合には経済的及び統計的分析にも使用することができます(関連する租税条約又は税務情報交換協定により許可されていない場合は、このような使用は適切ではありません)。

BEPS関連リスクの意味

行動13の報告書は、BEPS関連のリスクについては定義していません。それにもかかわらず、2013年2月の報告書「税源浸食と利益移転への対応5」に従って、「BEPS関連のその他のリスクの評価」という用語は、国の課税ベースを浸食する結果となる可能性のある税務リスクのハイレベルの評価に言及していると理解する必要があります。実際には、税務上のリスクの可能性のある指標を特定するためにCbC報告書を使用することがありますが、通常、追加の調査を行ってはじめてそのリスクを引き起こす取極めを理解することができます。CbCR情報だけでは移転価格が適切ではないという決定的な証拠とならないのと同じように、あるグループが他の形態のBEPSに従事しているという決定的な証拠ともなりません。

適切な使用指針はまた、CbC報告書の実施にあたり、適切な使用条件が相互協議合意書によって効力を与えられた場合、コンプライアンス違反又は適切な使用条件に違反する可能性があることに起因する結果についても詳述しています。

適切な使用指針の最後のセクションには、税務管轄地が必要に応じて、国内規則及び手続きに適切な使用制限を効果的に実施するために取ることのできる措置を含んでいます。

今後の影響

本実施指針は、CbCRの実施に関して生じた実務的な質問に関して、OECDの第5回目の公表となります。本実施指針は、収入という用語、並びに支払所得税及び未払所得税についてさらに明確化し、また、短い会計期間にかかるMNEグループについてより多くの指針を提供していします。OECDは、包括的枠組みの加盟国6が、国内の固有の状況を考慮して、上記の指針をできるだけ早く実施することを期待しています。さらに、経過措置期間中、OECDは、上記に詳述した指針の実施に関して、税務管轄地にいくつかの柔軟性を与えています。

OECDが行動13に関する最終報告書を発表して以来、CbCRの要件に関する活動が継続的かつ増加しています。この指針は今後も引き続き更新されます。新しい報告規定や改定規定及び新しい指針に対する各国の実施状況や対応に関して、企業は今後も動向を注視する必要があります。

適切な使用指針は税務当局を対象としていますが、税務当局がCbCRに関する手続きを現在どのように組織し、今後どう組織していくと見込まれるか、どの目的のために報告書が使用されるか、不適切な使用の結果はどうなるかについての洞察をMNEに提供しています。

巻末注

  1. 2016年7月12日付、Japan tax alert「OECDが国別報告書の実施に関する追加指針を公表」をご覧ください。
  2. 2016年12月19日付、Japan tax alert「OECDが国別報告書に関する指針を改定、国ごとの実施状況を掲載する新ウェブサイトも開設」をご覧ください。
  3. 2017年4月21日付、Japan tax alert「OECDが国別報告書に関する指針を改定」をご覧ください。
  4. 2017年7月19日付、EY Global tax alert, 「OECD releases update of Guidance on the Implementation of Country-by-Country Reporting」(英語のみ)をご覧ください。
  5. 2013年2月15日付、EY Global tax alert, 「OECD releases report on base erosion and profit shifting」(英語のみ)をご覧ください。
  6. 2016年2月24日付、EY Global tax alert, 「OECD releases plan to establish inclusive framework for BEPS implementation」(英語のみ)をご覧ください。

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