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OECDが国別報告書の実施指針の更新版を公表

Japan tax alert 2017年8月3日号

エグゼクティブ・サマリー

2017年7月18日、経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development: OECD)は、国別報告書の実施指針 (Guidance on the Implementation of Country-by-Country Reporting)の更新版(以下、「本実施指針」)を公表しました。 この更新版は、以下に示す新たな2つの疑問点に対処しています。 第一に、税務管轄地に複数の構成企業が存在する場合、集計データと連結データのどちらを使用して国別(Country-by-Country: CbC)報告書が作成・提出されるべきかという点です。 また、第二の点は、合弁会社(ジョイントベンチャー)など複数の非関連多国籍企業(multinational enterprise: MNE)グループによって所有及び/又は管理されている事業体の取扱いについてです。

本実施指針については、現在、英語版とフランス語版が入手可能であり、またドイツ語版も間もなく入手可能となる予定です。

詳細解説

2016年6月、OECDは、税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting: BEPS)行動の行動13に基づく国別(CbCR又はCbC報告書)報告書に関する追加指針を公表しました。 この追加指針は、次の4つの論点に対応しています。 それは、親会社の税務管轄地において任意提出を行うMNEにとって選択可能な提出方法に関する経過措置、投資ファンド及びパートナーシップに対するCbC報告書の適用、そして、MNEグループの合意された提出基準値に対する為替変動の影響です1。 OECDは2016年12月にCbC報告書の実施指針の更新版を公表し、CbC報告書の通知義務に関する新たな疑問点に対処しています。 この更新版の中でOECDは、CbC報告書の通知義務に関するフレキシブル・アプローチがBEPS行動13のミニマム・スタンダードに沿ったものであるかどうかという点について説明しています2

2017年4月、OECDは新たな疑問点を追加し、CbC報告書の実施指針を以下に示す4つの領域・論点別に再編しました。 それは、①CbC報告書のテンプレートに記載されている項目の定義、②CbC報告書において報告対象となる事業体、③CbC報告書の提出義務、④CbC報告書の共有メカニズムです。

2017年7月18日、OECDはCbC報告書の実施指針を更新し、新たに2つの論点を追加しました。 この更新版では、第一に、税務管轄地に複数の構成企業が存在する場合、集計データと連結データのどちらを使用してCbC報告書が作成・提出されるべきかという点、 及び、第二には、合弁会社など複数の非関連MNEグループが所有及び/又は管理する事業体の取扱いについて説明されています。

集計データか、あるいは連結データなのか?

本実施指針では、行動13及びモデル法令の指針が改めて示されており、クロスボーダー取引や税務管轄地内での取引、関連当事者間の取引や非関連当事者間の取引などにかかわらず、 税務管轄地レベルでは集計データを使用してCbC報告書が作成・提出されるものとすると規定されています。

しかし、本実施指針では、「税務管轄地が税務上の連結報告書の提出を含む連結納税制度を採用しており、連結調整によってグループ間取引が個別の勘定科目レベルで消去されている場合には、 当該税務管轄地は納税者が連結データを使用してCbC報告書を作成・提出することを許可することができる」と規定されています。 したがって、このような連結納税制度を採用している税務管轄地は、集計データではなく、連結データを使用したCbC報告書の作成・提出を許可するための具体的な措置を講じることができることになります。

この選択肢が特定の税務管轄地で利用可能となったと仮定した場合、連結データによるCbC報告書の作成・提出を選択する納税者は、表1に示す各税務管轄地への報告にも連結データを使用する必要があることに加え、 毎年一貫して連結データを使用続けなければなりません。 本実施指針では、納税者は、「本報告書は表1のデータを報告するために税務管轄地レベルでの連結データを使用して作成されている」という文言を表3に記載するとともに、 納税者が集計データを使用してCbC報告書を作成・提出したと仮定した場合、連結データが集計データと異なっている表1のコラムを表3に明記しなければならないと規定されています。

本実施指針では、「BEPS包摂的枠組みの参加国・地域は、各国・地域の特殊な国内事情を考慮したうえで、集計ベースによるCbC報告書に関する指針をできる限り速やかに実施することが期待される」 と規定されています。 本実施指針では、例えば、税務管轄地内の取引に関する連結データの報告を許可する指針がすでに公表されている場合には、MNEグループが時間をかけて必要な調整を行うことができることが認められています。 したがって、本実施指針では、「税務管轄地は、経過期間が短いときには(つまり、2016年中に開始する会計年度については)ある程度の柔軟性を認めることができる」 と規定されています。 この経過メカニズムのもとで連結データを報告する納税者は、上記と同様な表3の情報を提供しなければなりません。

複数の非関連MNEグループにより所有及び/又は管理されている事業体の取扱い

本実施指針では、CbC報告書の目的上、基本原則として、事業体の取扱いは会計処理に従うべきであると改めて述べられています。 事業体が複数の非関連MNEグループによって所有及び/又は管理されている場合には、CbC報告書の目的上、当該事業体の取扱いは、 各非関連MNEグループに個別に適用される会計ルールに基づいて決定される必要があります。 したがって、適用される会計ルールによって、事業体をMNEグループの連結財務諸表に連結することが義務付けられている場合には、当該事業体はMNEグループの構成企業と見なされることになります。 しかし、適用される会計ルールに基づいて事業体を連結する必要がない場合、又は、持分法会計ルールに基づいて事業体を財務諸表に組み入れている場合には、当該企業は構成企業と見なされないことになり、 その結果、CbC報告書で報告されないことになります。 本実施指針では、完全連結又は比例連結を使用する場合にこのアプローチが適用されると規定されています。

本実施指針では、「税務管轄地は、比例連結が適用される場合には、年間連結売上高7億5000万ユーロであるCbC報告書の提出基準値を適用するうえで、 事業体の総売上高を比例配分して算入することを認めることができる」と規定されています。 また、税務管轄地は、MNEグループが、同グループの連結財務諸表に記載された情報の範囲内で、同グループのCbC報告書に事業体の財務データを比例配分で算入することを認めることができます。

おわりに

CbC報告書の実施に関連して生じた実務的な疑問に関してOECDが追加指針を公表するのは、これで4度目となります。 本実施指針では、「税務管轄地が税務上の連結報告書の提出を含む連結納税制度を採用しており、 連結調整によってグループ間取引が個別の勘定科目レベルで消去されている場合には、当該税務管轄地は納税者が集計データではなく連結データを使用してCbC報告書を作成・提出することを許可することができる」 という旨が定められていますが、どの税務管轄地が連結データを使用したCbC報告書の作成・提出を許可するための措置を講じるかについてはまだ定かではありません。 また、本実施指針では、複数のMNEグループにより所有及び/又は管理されている事業体の取扱いがより明確に規定されています。 OECDが行動13の最終報告書を公表して以来、CbC報告書に関連する活動は全般的に継続かつ増大していますが、 特に最終親会社等届出義務に関する活動が増大しています。 CbC報告書の実施指針は、今後も引き続き更新されると予想されます。 納税者は、CbC報告書に関する新たな要求事項や要求事項の修正、及び、各国・地域がこの新実施指針をどのように実施し、 又は、当該指針に対してどのように反応するかを引き続き注意深く監視することが重要です。

巻末注

  1. 2016年7月12日付、EY Japan tax alert、「OECDが国別報告書の実施に関する追加指針を公表」をご参照ください。
  2. 2016年12月19日付、EY Japan tax alert、「OECDが国別報告書に関する指針を改定、国ごとの実施状況を掲載する新ウェブサイトも開設」をご参照ください。
  3. 2017年4月7日付、EY Global Tax Alert, 「OECD updates its Guidance on Country-by-Country Reporting」(英語のみ)をご参照ください。

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