EY税理士法人
ライブラリー

OECD、多国籍企業及び課税当局のための移転価格算定に関する指針を公表

Japan tax alert 2017年7月27日号

エグゼクティブ・サマリー

2017年7月10日、経済協力開発機構(OECD)は、多国籍企業及び課税当局のための移転価格算定に関する指針(Transfer Pricing Guidelines、以下、「OECD TPG」)の2017年版を英語とフランス語で公表しました。OECD TPGの2017版(以下、「2017年版」)は、主にOECD/G20の税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトによる変更の統合を反映していますが、OECD TPGの統合版を作成するためにセーフハーバーに関する改定指針やその他整合性を図るための変更を多数盛り込んでいます。

詳細な検討

背景

OECD TPGは、関連者間の国境を越えた取引の法人所得税上の評価に関する国際的コンセンサスとなっている「独立企業原則」の適用に関するガイダンスを提供しています。OECD TPGの原版は、1979年に公表された「OECD報告書、移転価格と多国籍企業」の改訂版として、1995年にOECDによって最初に公表されました。OECD TPGは、初版以来定期的に更新され、直近の改訂版は、2010年に書籍形式で発行されました。

この改訂版以降、OECDはOECD TPGの多くの章について作業を行ってきました。2013年5月には、第IV章のセーフハーバーに関するセクションEの改訂された文言が承認されました。セーフハーバーに関する改訂ガイダンスは、各国が遵守の負担を軽減し、小規模納税者や複雑でない取引の場合の確実性を高める機会を提供します。

2015年10月、OECDは、行動8-101と132に関する最終報告を含む、BEPS行動計画の最終報告書を発表しました。これらの報告書は、OECD TPGの第I章(独立企業原則)、第II章(移転価格算定方法)、第V章(文書化)、第VI章(無形資産に対する特別な配慮)、第VII章(グループ内役務提供に対する特別の配慮)及び第VIII章(費用分担取極)について、多数の改定を勧告しました。この改定案は、OECD理事会が2016年5月23日に正式に採択したもので、同時にOECD加盟国と非加盟国の双方が行動8-10の報告書及び行動13の報告書3に記載された指針に従うことを推奨する移転価格に関連するBEPS措置に関する勧告も採択されました。

2017年 OECD TPG

2017年7月10日、OECDはOECD TPGの2017年版を発表しました。TPGのこの新しいバージョンは、セーフハーバーに関するセクションとBEPSの様々な勧告事項の合意された変更を統合しています。その結果、2017年版に含まれているものは、独立企業原則を適用するための新しい指針(OECD TPGの第I章のセクションDの改訂)、ロケーション・セービング、統合された労働力、多国籍企業(MNE)のグループシナジー(第I章への追加)を含む移転価格の比較可能性要因、商品取引の移転価格(第II章への追加)、低付加価値グループ内役務提供(第VII章の改訂)、無形資産に関する第VI章の新版、費用分担取極を扱う第VIII章、及び移転価格文書化の第V章があります。

さらに、2017年版には第IX章、事業再編の移転価格に関する側面に準拠した変更を含み、これはBEPSプロジェクトの結果として改訂され、2017年4月にOECD理事会で承認されたOECD TPGの一部分との不一致に対処するものです。また、2017年5月19日にOECD財政委員会(CFA)の承認を得たその他の数多くの整合性を図る変更も含まれています。

2017年版には、関連者間の移転価格設定に関するOECD理事会の改訂勧告も含まれています。改訂勧告は、2016年の勧告と同様に、BEPSプロジェクトに参加しているすべての国が第8-10条と第13条のガイダンスに従うことを約束しているという事実に言及しています。改訂勧告では、BEPSに関する包括的枠組みの確立に言及しています4。包括的枠組みのすべてのメンバーは、OECD TPGの作業部会を含むCFAと技術ワーキンググループに同等の立場で参加しています。改訂された勧告は、非OECD加盟国に改訂勧告を遵守するよう呼びかけ、OECDを超えてOECD TPGの関連性を強化しています。最後に、将来のガイドラインへ本質的に技術的性質の改定をコンセンサスにより承認するために、OECD理事会によるCFAへの権限の委任を含んでいます。

今後の影響

2017年版の公表は、2010年の最後の更新以来採択されてきたOECD TPGへの変更を統合しています。各国はOECD TPGを自国の税制に反映させるか否か、反映させる場合はその方法について異なるアプローチをとっています。例えば、TPGの新しいバージョンを国内法に組み込むためには、一部の国では、国内規則は、承認されたOECD TPGを明示的に参照し、他の国では何らかの形の行政やその他の行動が必要です。2017年の改定案のほとんどの変更がOECDの承認を以前に受けていました。2017年にOECD理事会及びCFAによって承認された変更は、第IX章の整合性のための変更及び一貫性を取るための変更に関連しています。

多国籍企業は、事業を行っているそれぞれの国・地域について、この発展の意味を理解し分析する必要があります。例えば、多国籍企業は、グローバルな事業並びに現在の移転価格政策及びアプローチに関して、OECD TPGの改定案をレビューすべきでしょう。おそらく、OECD加盟国及び非OECD加盟国の税務当局により、国境を越えた企業間取引に修正案の概念を適用する監視が増加すると考えられます。

この分野におけるさらなるガイダンスと作業は、OECDが実施しており、今後、注視していく必要があります。例えば、評価困難な無形資産5、取引単位利益分割6、金融取引などが挙げられます。後者に関する最初のディスカッションドラフトは、今年後半に公表される予定です。

巻末注

  1. 2015年11月19日付EY Japan tax alert、「OECD、BEPS行動8に基づく無形資産の移転価格に関する最終ガイダンスを発表」、2015年11月13日付EY Japan tax alert、「OECD、BEPS行動8-10における低付加価値グループ内役務提供の移転価格に関する新たな指針を公表」、2015年11月13日付EY Japan tax alert、「OECDが、BEPS行動計画8-10に基づく、リスク及び認識に関する移転価格の最終ガイダンスを公表」、2015年10月29日付EY Japan tax alert、「OECDが、BEPS行動計画 8-10に基づく、クロスボー ダーのコモディティ取引に関する新しいガイダンスを公表」をご参照ください。
  2. 2015年11月19日付EY Japan tax alert、「OECD、行動13に基づく移転価格文書化及び国別報告書に関する最終レポートを公表」をご参照ください。
  3. 2016年6月20日付EY Japan tax alert 、「OECD理事会がBEPS報告書を取り入れたOECD移転価格ガイドラインの改定を承認」をご参照ください。
  4. 2016年2月24日付EY Global tax alert 、「OECD releases plan to establish inclusive framework for BEPS implementation」(英語のみ)をご参照ください。
  5. 2017年6月14日付EY Japan tax alert 、「OECD、評価困難な無形資産(HTVI: Hard-To-Value Intangibles)に関する実施ガイダンスを公表」をご参照ください。
  6. 2016年7月28日付EY Japan tax alert 、「利益分割、恒久的施設への利益の帰属及び事業再編に係るOECD移転価格ガイドライン第9章の整合性を図るディスカッションドラフトをOECDが発表」、2017年6月26日付EY Global tax alert、「OECD releases revised discussion drafts on profits splits and attribution of profits to permanent establishments」(英語のみ)をご参照ください。

Japan tax alert 2017年7月27日号をPDFでDownload (173KB)