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インドGST審議会、GST税率区分等を最終決定

Japan tax alert 2017年6月12日号

概要

インドでは、7月1日からのGST導入に向けた準備が進んでいます。物品サービス税(以下、「GST」)審議会では、GST税率と一部の品目を除く品目区分を決定し、税率とその適用範囲が明確になるなど、多くの事項について決定がなされてきました。本アラートでは、税率と品目区分及び課税価額の概要について解説します。

これまでのGSTに関する議論

インドの複雑な税制は長い間、ビジネスにとっての障害になってきました。特に、統一されたGST制度が存在しないことは、州をまたぐ取引の大きな妨げになってきました。 この状況を改善すべく昨年憲法改正が実施され、4つのGST法案(中央政府GST(CGST)、統合GST(IGST)、連邦直轄領GST(UTGST))及び州に対する補償法案)が本年4月12日に成立しました。 このうちデリー首都圏をはじめとする、連邦政府に直接統治されている連邦直轄領に対するUTGST法案は新しく成立したものです。 現在は、各州レベルで州GST(SGST)法案の制定が進められており、まだ法案が成立していない一部の州も6月末までには法案の整備が完了する予定です。

GST税率

GST審議会は、物品を様々な区分に分類することにより、個々の物品に適用されるGST税率を概ね確定させました。 また、税収補償の為のCessと呼ばれる目的税が課せられる品目についても概ね承認されました。政府が発表したGST税率の別表では、物品が0%、5%、12%、18%、28%の税率区分に分類され、Cessの別表では、炭酸水、パンマサラ、石炭、自動車といった様々な製品に課せられるCess税率が記載されています。 また、審議会は、多種多様なサービスの税率区分についても最終決定した一方、現在免税となっているサービスの大半について、引き続き免税とすることを提案しています。 また、リバースチャージが適用されるサービスについてもGST審議会によって承認されました。

物品に対するGST税率区分について(代表例)

免税 5% 12% 18% 28% 28% + 目的税
  • 食用穀物
  • シリアル類
  • 牛乳
  • ジャッガリー(黒砂糖)
  • 食料
  • 石炭
  • 砂糖
  • 紅茶・コーヒー
  • 医薬品
  • 食用油
  • インド産菓子類
  • ジュース類
  • 牛乳を含む飲料
  • バイオガス燃料
  • 肥料
  • 資本財
  • 中間財
  • 整髪料
  • 石鹸
  • 歯磨き粉
  • 空調機
  • 冷蔵庫
  • 小型車(1%/3%の目的税)
  • 高級車(15%の目的税)

目的税について

特定の物品に通常のGST税率に加えて課税される目的税の最高税率は、以下のとおりです。

政府はこの税率の範囲において、州政府の税源を補償することを目的として、自由に税率を設定できることになっています。この目的税は、今後5年間のうちに導入される予定ですが、制度の廃止時期については定まっていない部分が多く、今後の動向に注意が必要です。

  • パンマサラ:135%
  • 自動車(10人乗り未満のものでハイブリットカーを含む)、炭酸飲料:15%
  • タバコ・噛みタバコ:1,000本当たり4,170インドルピー(約72,000円)又は290%、もしくはその両方
  • 石炭:1トンあたり400インドルピー(約700円)

GST審議会が承認したリバースチャージ・メカニズムが適用されるサービス

GST審議会が承認したリバースチャージ・メカニズムが適用されるサービスには、以下のようなサービスが含まれます。

  • 貨物のトラック輸送サービス
  • 法務サービス
  • 政府や地方自治体が提供するサービスの一部
  • 保険代理店が保険事業の継続を目的に提供するサービス

上記サービスのGSTは、すべて役務提供者ではなく利用者によって支払われることになります。

また、今回公開されたリストは、追加された特定のサービスを除き、既存のリバースチャージ・メカニズムの対象となるサービスのリストと類似しています。

主要なサービスに対するGST税率区分

免税 5% 12-18% 28%
  • 教育
  • 医療
  • 住宅
  • 料金が1,000インドルピー(約1,700円)以下の宿泊費
  • 貨物運送
  • 鉄道運賃(寝台車除く)
  • 航空運賃(エコノミークラス)
  • タクシー
  • 印刷媒体への広告掲載費
  • 作業契約
  • 航空運賃(ビジネスクラス)
  • 通信サービス
  • 金融サービス
  • レストランサービス
  • 料金が1,000から5,000インドルピー(約1,700から8,500円)の宿泊費
  • 映画上映代
  • 賭博代
  • 5,000インドルピー(約8,500円)以上の宿泊費

GST課税価額規定

課税価額規定では、売買によらない供給、関連者間取引、代理人取引などの課税価額の決定方法が明確化されました。

  • 物品・サービスの供給の対価が、全額金銭でない場合の価額
    • 提供された物品又はサービスの市場価額(Open Market Value)
    • 市場価額がない場合は、金銭による対価と現物による対価と同等の額の合計額
    • 上記の方法で提供された物品又はサービスの価額が決定できない場合は、同様の種類と数量の物品又はサービスの価額
    • 以上のどの方法でも価額が決定できない場合は、金銭による対価と「規則4又は規則5」により決定された現物による対価と同等の額の合計額
  • 物品・サービスの提供が関連者間の場合の価額(代理人取引を除く)
    • 供給の市場価額
    • 市場価額が入手できない場合は、同様の種類と数量の物品又はサービスの価額
    • 上記の方法で価額が決定できない場合は、「規則4又は規則5」によって算出された価額

ただし、物品・サービスの取得者が仕入税額控除を全額享受することができる場合は、上記に列挙した価額を使用する必要はなく、インボイス価格を市場価額と見なすことで構わないとしています。

  • 物品の提供が、代理人を通して行われる場合の価額
    • 委託者(Principal)と代理人間の価額は、物品の市場価額、又は取得者による非関連者に対する同種物品の供給価格の90%の価額
    • 上記の方法で価額が決定できない場合は、「規則4又は規則5」による価額
  • 上記のいずれかの方法によっても課税価額を決定できない場合には、製造原価又は取得価格又は役務提供価格の110%の価額とする

まとめ

物品にかかるGST税率については、食料などの生活必需品が免税又は5%に抑えられた一方、消費財や電気製品の多くが最高税率である28%に分類されることになりました。 大方の予想に反し、税率28%に分類される品目が全体の19%も占めることになることから、一部の品目について実効税率の上昇が予想されます。 一方で、重要品目(金、衣類、ビスケット)の税率区分はまだ定まっていません。

サービスの税率区分に関する審議会の決定は、現在の実効税率に近い水準を維持するため、物品に適用される課税根拠を踏襲しています。 ただし、サービスが新たな税率区分に分類することにより、今後区分の解釈を巡り、訴訟等が発生するリスクもあります。 また、銀行、保険、通信のサービスに18%の税率が賦課されることについては、今後これらのサービスに係るコストが上昇する可能性を示唆しています。 既に免税が適用されているさまざまなサービスが引き続き免税となる措置は前向きなステップではありますが、現行制度下での免税を巡る訴訟がGST制度下でも継続することになるかもしれません。

上記のとおり、この度、税率区分が明確になったことを受け、税率の影響分析と対応策の策定が求められます。

課税価額規則については、在庫内移動、関連者間供給、代理人を通した供給などの価額の決定方法が明確になったことから、企業にとっては歓迎すべきものに思われます。 しかし、少なくともGST導入当初は、インボイス価額以外の手法での価額算定について、その算定方法の具体的解釈等を巡り混乱が生じることも想定されますので、注意が必要です。

また、本アラートでは触れておりませんが、現行間接税制度下での税額控除額のGST制度への移行に関して、手続きの詳細が次々と通知され始めています。 現行制度下の税額控除を円滑にGST制度に移行できるよう手続きの準備を開始する必要があります。

GSTそのものの動向は、今や間近に迫っている7月1日の施行に向けて力強いシグナルを発しています。 産業界は今後数週間の最後の詰めに備えて対策を推し進めていく必要があります。 具体的には、GST税率の影響の評価にとどまらず、新たな税制への移行に向けた全体的な事業戦略を見つめ直すことも肝要です。


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