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タイの新関税法導入罰則規定等が大幅変更へ

Japan tax alert 2017年6月7日号

タイの新関税法、11月13日から発効へ

タイにおいて、新関税法B.E.2560が2017年5月17日に王国政府公報で公表され、2017年11月13日(公表日から180日後)に発効します。新法の主な目的は、税関行政と通関手続を改革し、貿易の円滑化を図り、関税徴収の効率性、公正性、及び透明性を高めることにあります。特に注目すべき点として、関税違反に係る罰則規定の見直しが挙げられます。

違反に対する罰則の見直し

タイの現行関税法では、密輸、意図的な関税回避、及び輸入規制品に対する制限又は禁止の回避の場合に、法律上は物品価格の4倍の罰金が科される可能性がありました。しかしながら、新たに定められる罰則は、違反内容により異なることになります。

違反の種類 罰則
1 密輸
  • 物品関税込み価格の4倍の罰金もしくは10年以下の懲役、又はその両方
  • 物品の没収
2 意図的な関税回避
  • 関税の納税不足額の0.5~4倍の罰金もしくは10年以下の懲役、又はその両方
  • 物品の没収の可能性もあり
3 輸出入制限又は禁止物品の輸出入
  • 50万バーツ(約160万円)以下の罰金もしくは10年以下の懲役、又はその両方
  • 物品の没収の可能性もあり
4 虚偽又は不備のある申告
  • 50万バーツ(約160万円)以下の罰金

また、上記の(1)、(3)、(4)における違反は、意図的であったかどうかに関係なく、違反とみなされます。

ただ、新法令の実務上の運営については定まっていないことから、不透明な点も多く、今後の動向に注意が必要です。

新たな税関による調査規定

  • 関税確定期間
    • 関税額は、税関申告日から3年以内に確定されることになっています。
    • 事情により3年以内に関税額を確定できない場合、税関職員は税関長に、最大2年まで期間延長を要請することができます。
    • しかし、納税者に関税逃れの意図があったと税関長が判断するに足る根拠がある場合、上記の延長期間終了後、最大5年間に遡って関税を徴収することができます。
    • 現行法令では、関税額の確定が10年と定められているのに対し、新法令では税関が遡及的に課税できる期間が違反程度等に応じて段階的に変わることとなります。

税関職員と情報提供者に対する報奨金・奨励金の分配の改正

違反の種類 罰則
1 密輸
  • 報奨金・奨励金の分配は、現在の没収品売却代金の55%から40%に引き下げられます。 物品が没収されない場合、あるいは没収品が売却できない場合、報奨金・奨励金は罰金から差し引かれます
  • 報奨金・奨励金の分配額は、税関職員と情報提供者それぞれにつき500万バーツ(約1600万円)を上限とします
2 規制品に対する禁止の回避
3 関税の支払いを避ける意図をもった関税回避
  • 報奨金の分配は、現在の没収品売却代金の30%から20%に引き下げられます。 物品が没収されない場合、あるいは没収品が売却できない場合、報奨金は罰金から差し引かれます
  • 税関職員への報奨金の分配額は、500万バーツ(約1600万円)を上限とします
4 統制品に対する制限の回避
5 虚偽又は不備のある申告

11月13日までに開始された監査に基づき、違反が見つかった場合、現行法令による高い報奨金・奨励金が、税関長の判断により分配される可能性があります。

その他の規制

  • 関税の納税不足額に対し、1カ月当たり1%の延滞税が課せられます。
  • 関税の還付申請期間は、輸出入日後2年から3年に延長されました。
  • 関税上訴委員会(Customs Appeal Commission)による上訴審判期間が180日と定められました。規定の期間内に上訴に対する裁定が下されない場合、納税者は当該案件を裁判所に持ち込む権利を有します。
  • 税関職員が、輸出入者の所在地に立ち入り、輸出入に関連する文書やデータを監査する権限を、輸出入日から最大5年までもつようになると明記されました。

経過規定

  • 現行の関税法に基づき付与された権限に従って発せられたあらゆる既存の緊急命令、省令、規則、通知及び命令は、それらが新関税法の規定に相反しない限り、有効に存続します。
  • 新関税法に基づいて必要な緊急命令、省令、規則、通知及び命令を発するためのプロセスは、2018年5月11日(新関税法が発効した日から180日後)までに完了する予定です。

企業に求められる対応

今回の新関税法の導入を受けて、企業は以下の2点について留意が必要です。

1. 関税コンプライアンス体制の確立

新関税法下では、虚偽又は不備のある申告ついては、50万バーツ(約160万円)以下の罰金が科されるだけである一方、 密輸や意図的な関税回避と認定された場合には、より厳格な罰則が適用されることになります。

すなわち、企業側は、タイ子会社内部に関税コンプライアンス体制を構築するとともに、体制に沿った関税コンプライアンス文書を定めることが重要になります。 これにより、何かしらの申告ミスが発生した場合でも、密輸又は意図的な関税回避ではないことを主張できる可能性が高まります。

2. 11月までの調査リスクへの対応

11月13日までに開始された監査に基づき違反が見つかった場合、現行法令による高い報奨金・奨励金が分配されることが可能になることから、11月13日までの期間に税関による事後調査が増加するおそれも想定されます。 企業側はこのような調査が入った際の対応体制も併せて整備しておくことが重要となります。


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