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EU域外事業者によるEU VAT還付申請の提出期限が2017年6月30日に迫る

Japan tax alert 2017年4月26日号

概要

2016年に欧州で付加価値税(VAT)の支出があったEU域外事業者は、所定のルールに沿って当該EU加盟国に還付申請することにより、VAT還付を受けられる可能性があります。 一般に、EU域外事業者による還付申請は暦年終了後6カ月以内に提出する必要があり、大半のEU加盟国の申請提出期限は2017年6月30日です。 したがって、納税者は還付申請に必要な情報をただちに収集する必要があります。

多くの多国籍企業において、設立国又はVAT登録国以外の国でVATの支払いが発生しています。 例えば、見本市や会議、食事や宿泊、出張、交通費や燃料費、接待、マーケティング費用や広告費用、専門サービス、通信、印刷材料や文房具、及び研修などについて海外VATの支払いが発生する場合があります。 多額の事業活動経費についても、海外VATの還付が問題となる可能性があります。

VAT還付の仕組みが存在する一方で、非居住者である事業者にとって実際に要件を満たすのは困難な場合があります。 すべての国で非居住者へのVAT還付が認められているわけではなく、また、全ての費用項目に対するVAT還付が認められているわけでもありません。 さらに、税務当局は、還付の承認にあたって厳格な基準を適用しています。 海外VATの還付における障害としては、様々な国・地域におけるVATルールの理解不足、難しい行政手続き、言葉の壁、申請を裏付ける書類の不備又は誤り、及び重要な締め切りに間に合わないことなどが挙げられます。 このため、事前に計画を立て、詳細な規則を理解した上で、申請を適切に行うことにより、事業活動経費に係るEUのVATの還付確率が改善されると考えられます。

詳細解説

EU第13号VAT指令 -- 誰が利用できるか?

EU第13号VAT指令は、EU域外で設立された企業に対して、EU加盟28カ国1で生じるVATの還付を受ける権利を付与するものです。 ノルウェーとスイスでも、類似した還付制度が、当該国で生じる経費に対して適用されています。 EU域外に登記されている事業者は、以下のすべての要件を満たすことで、EUで支払ったVATの還付申請のために第13号指令を利用することができます。

  • 事業者がEU域内でVAT登録を行っていない、VAT登録を行う義務を負っていない、もしくはVAT登録を行う資格がない
  • EU域内に事業拠点を有していない
  • EU域内で供給を行っていない(国際物品運送に関連する輸送サービス、又はVAT納付義務がEUにおける供給先受益者に生じる役務の提供を除く)

また、還付申請が認められる費用は、その事業活動がEU域内で実施される場合にVAT課税対象となる事業者により生じるものである必要があります。 例として、EUでは金融サービスは一般に非課税となってます。 そのため、インドで設立された銀行はEUのVAT法においてVAT還付対象事業者とみなされないため、全面的なVAT還付が認められない可能性があります。 ただし、VAT還付の可否は申請者の実際の事業活動に大きく左右されるため、必ずしも簡単に判断できる問題ではありません。

適格費用

還付申請対象となるのは、事業関連費用に係るVATに限られます。 したがって、当還付手続きの下で、個人的な支出は還付されません。 また、一部の事業経費はVAT還付対象にならない場合があります。

EU各加盟国は、還付申請対象となり得る費用の種類について独自の規則を有しており、当該規則は国によって大きく異なる場合があります。 例えば、一部の加盟国はホテルの宿泊代や燃料費に関するVAT還付は認めていません。 一般的に、還付申請対象となるのは、事業活動が現地で実施される場合に控除可能な費用である必要があります。 例えば、現地企業による接待費に係るVAT控除が認められない場合、当該加盟国で発生した接待費についてEU域外事業者はVAT還付申請を行うことはできません。

非EU加盟国との互恵関係

また、一部のEU加盟国は、還付申請を行うEU域外事業者の居住国で課せられる売上税について、EUの事業者に対して類似の還付が認められることを要件としています。 これは「互恵」主義と呼ばれています。 このため、EU域外の当該国が非居住者に対してVATを課さない場合、又は現地VATを還付しない場合、当該国の事業者は一部のEU加盟国で発生したVATについて還付申請できない場合があります。 しかしながら、すべてのEU加盟国がこのルールを同じ方法で適用しているわけではない点に留意が必要です。

EU第13号VAT指令の申請書

還付申請対象期間は加盟国によって異なりますが、一般に年次還付申請が認められています。 EU域外事業者を対象とするEUのVAT還付プロセスは、現在のところ概ね書面に基づくシステムとなっています。 事業者がVAT還付申請を行う場合、対象国別ごとに申請書を提出しなければなりません。 申請書は一般に、当該加盟国の税務当局のウェブサイトから印刷できますが、必要事項を記入した上でインボイス原本と共に提出しなければなりません。 申請書を現地の言語で記入する必要がある場合に、問題が生じる場合があります。

こうした要件を満たすために、申請国におけるサポートが必要な場合があります。

締切り

一般に、年次還付申請の締切りは、費用が発生した暦年の翌年の6月30日です。 つまり、2016年度還付申請(2016年1月1日から2016年12月31日までの日付のインボイス)の提出期限は、2017年6月30日となります。 ただし、申請対象期間と締め切りについては特定の例外があります。英国では、EU域外事業者のVAT還付申請は、7月1日から6月30日までの「特定年度」に基づきます。英国における年次還付申請の提出期限は、当該特定年度末の6カ月後(すなわち、12月31日)となっています。EU各加盟国が設定する提出期限は確定的な日付であり、期日を過ぎた申請は認められていません。 この厳格な期限は、外国企業が還付申請要件を満たす上での課題の1つです。

  1. オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、 ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、 ルーマニア、スロバキア共和国、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国

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