EY税理士法人
ライブラリー

OECDが国別報告書に関する指針を改定

Japan tax alert 2017年4月21日号

エグゼクティブサマリー

2017年4月6日、経済協力開発機構(OECD)は、国別報告書の実施指針(Guidance on the Implementation of Country-by-Country Reporting)の改定版(以下、「改定指針」)を公表しました。 改定指針は、①国別報告書のテンプレートに記載されている項目の定義、②国別報告書において報告対象となる事業体、 ③国別報告書の提出義務、④国別報告書の共有メカニズム(情報交換、代理親会社による提出、ローカル・ファイリング等)に係る4つの論点別の校正となっており、新たに追加された5つの質問事項が含まれています。

改定指針は現在、英語とフランス語で閲覧できますが、近日中にドイツ語でも閲覧できるようになる予定です。

詳細解説

2016年6月、OECDは、BEPSプロジェクト行動13に基づく国別報告書の実施において、一貫性の確保を目的とする追加的な指針を公表しました。 この追加指針で表明された論点は、①親会社の税務管轄地において任意提出を行う多国籍企業(以下、「MNE」)が選択可能な提出方法に関する経過措置、 ②投資ファンドに対する国別報告書の適用、③パートナーシップに対する国別報告書の適用、及び④MNEグループの提出基準値として合意された7億5千万ユーロに関する為替変動の影響、の4つでした1。 2016年12月、OECDは同指針を改定し、国別報告書の通知義務に関する新たな質問を含め、通知義務に対するフレキシブル・アプローチの採用が、行動13のミニマム・スタンダードに沿ったものであるかについて取り上げました2

今回発表された改定指針は、以下の4つの論点に係る事項について改変しています。

  • 国別報告書のテンプレートに記載されている項目の定義
  • 国別報告書において報告対象となる法人
  • 国別報告書の提出義務
  • 国別報告書の共有メカニズム

その中には、新たに追加された5つの質問事項、すなわち、①収益の定義、②企業グループ及び構成企業の存在を判定するための会計基準、③グループの連結総収益の定義、④主要株主の取扱い、⑤国別報告書の図表1に記載する関連者の定義が含まれています。

国別報告書のテンプレートに記載されている項目の定義

改定指針では、投資活動から生じる特別損益を国別報告書の図表1の収益欄に含めなければならないことが明記されています。

さらに、関連者(related party)の収益に関する報告について、関連者は行動13における関連企業(associated enterprises)と定義され、国別報告書の図表2に記載する構成企業と解釈されるべきとしています。 これにより、MNEグループの構成企業の定義に該当する関連企業のみが、関連者とされることが明らかになりました。

国別報告書において報告対象となる法人

改定指針は、行動13の報告書において、企業グループ及び構成企業の存在の判定基準として、特定の会計基準における連結ルールを適用すべきとの記載はありません。 しかしながら、最終親会社(Ultimate Parent Entity、以下「UPE」)もしくは代理親会社(Surrogate Parent Entity、以下「SPE」)の株式持分が公開証券取引所で取引されている場合、UPE/SPEの税務管轄地はMNEグループに対し、グループが既に採用している会計基準における連結ルールの適用を義務付けることが期待されるとしています。

一方、UPE/SPEの株式持分が公開証券取引所で取引されていない場合、選択した会計基準を複数年度にわたって適用することを条件に、UPE/SPEの税務管轄地はMNEグループに対し、現地において一般に認められた会計基準、国際財務報告基準(以下、「IFRS」)、その他の会計基準のいずれを適用するかの選択を認めてよいとしています。 一方、UPE/SPEの税務管轄地が特定の会計基準の採用を義務付けている場合は、当該会計基準が適用されなければならないとしています。 また、税務管轄地の連結ルールにおいて、投資主体は被投資企業を連結しなければならないと規定されている場合、税務管轄地は、構成企業の存在の判定基準として、IFRSの連結ルールの適用を認めてよいとしています。 ただし、特定のMNEグループの国別報告書において全体的に採用されている会計基準から逸脱する場合は、当該MNEグループの国別報告書の図表3に記載する必要があります。

さらに改定指針には、非関連者が少数株主持分を保有する構成企業をどのように取り扱うかも明記されています。 適用会計基準において、非関連者が少数株主持分を保有する構成企業の全部連結が定められている場合、当該構成企業の収益は全て7億5千万ユーロの基準値に含める必要があります。 加えて、国別報告書に含める構成企業の財務データは、按分計算した金額ではなく全額でなければなりません。

国別報告書の提出義務

適用会計基準に基づく連結財務諸表に投資活動から生じる特別損益が記載されている場合、改定指針で明確化された図表1の収益の定義に従い、税務管轄地は、7億5千万ユーロの基準値を満たすか否かの判定基準となるグループの連結総収益に、当該損益を含めることを義務付けてよいとしています。

また、一定の項目に関して、財務諸表に取引総額を計上しない場合がある金融機関の基準収益を判定するため、MNEグループは、適用会計基準上における「収益」に類似する項目(ネット・バンキング・プロダクト、ネット・レベニュー等)を用いるべきと明記されています。 例えば、金利スワップ等の金融取引から生じる損益が、適用会計基準に基づきネットベースで適切に報告されている場合、「収益」とは取引から生じるネットの金額を意味するとしています。

国別報告書の共有メカニズム

OECDの今回の発表では、国別報告書の共有メカニズムに係る事項ついて新たに追加された指針はありません。

おわりに

国別報告書の実施と解釈上の問題について、BEPS包摂的枠組みの参画メンバー及びOECDが指針を発表したのは今回で3度目になり、各国間の一貫性を確保するのに役立つと思われます。 改定指針により、取り上げられた事項の取扱いが明確化されました。 国別報告書全般、とりわけ最終親会社報告事項に関しては、この1年、継続的かつ活発な協議が続けられてきました。 更なる指針が発表される見込みは現時点では不明ですが、新たな報告要件や改定要件及び今回発表された改定指針についての各国の実施状況や反応に関して、企業は今後も動向を注視する必要があります。


Japan tax alert 2017年4月21日号をPDFでDownload (160KB)