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平成29年度税制改正における新たな役員給与税制

Japan tax alert 2017年4月12日号

平成29年度税制改正の目玉として注目されていた役員給与税制に関する改正については、新しい法関連法令が公布され、制度概要や必要な手続きが明らかになりました。 すでに業績連動給与や株式報酬を導入している法人や導入を検討している法人にとっても、留意すべき点が多く盛り込まれています。 損金算入のために何が必要か確認の上、手続きに漏れがないようにしたいところです。

1. 事前確定届出給与に関する改正

(1) 事前確定届出給与の定義と対象となる株式等の範囲

事前確定届出給与とは、次のように定義されています(法人税法(以下、「法法」という)第34条第1項第2号)。

その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式若しくは特定新株予約権を交付する定めに基づいて支給する給与で、 定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの

つまり、株式報酬については、交付する株式数が確定しているもの、特定譲渡制限付株式とストックオプション(特定新株予約権)については、確定した額の金銭債権に対して交付されるものが該当し、 業績連動要件が付されているものは除外することとされています。

また、株式報酬及びストックオプションは、市場価格のある株式等(支配関係を有する関係法人が発行したものを含みます)を対象としており(適格株式、適格新株予約権)、損金算入の対象となるのは、 上場企業及び上場企業と50%超の資本関係を有する法人の役員に対する給与に限定されています。

なお、確定した額に相当する適格株式又は適格新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与も、事前確定届出給与の範囲に含まれることとされたため(法人税法施行令(以下、「法令」という)第69条第8項)、 株数ではなく支給金額を確定して、その金額に相当する株式を交付する場合も損金として認められることになりました。

(2) 報酬制度と事前届の要否

① 届出書の提出を要しない特定譲渡制限付株式と特定新株予約権

職務執行の開始の日から1月を経過する日までに開催される株主総会等の決議により、当該決議の日から1月を経過する日までに交付する旨を定め、その定めに基づいて交付される特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権に係る給与は、事前届の提出を要しないこととされています(法令第69条第3項)。

したがって、届出書の提出を省略しようとする場合には、一般に、譲渡制限付株式又は新株予約権の交付に係る決議は取締役会で行うため、株主総会から1月を経過する日までに取締役会を開催して特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権の交付に関する決議を行い、当該決議の日から1月を経過する日までに当該交付を行う必要があります。

② 事前届の提出を要する場合

譲渡制限の付されていない株式による報酬など、上記①以外の報酬については、原則として、届出書を提出する必要があります(法人税法施行規則(以下、「法規」という)第22条の3第1項)。

届出期限 原則として、株主総会等により役員給与に関する決議を行った日から1月を経過する日まで
届出事項 届出をする内国法人の名称、納税地及び法人番号並びに代表者の氏名
事前確定届出給与対象者の氏名及び役職
事前確定届出給与の支給時期及び各支給時期における支給金額又は交付する株式若しくは新株予約権の銘柄、確定数給与(所定の時期に確定した数の株式又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与)に該当する場合にはその交付する数及び交付決議時価額(当該定めをした日における価額)、所定の時期に確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に該当する場合には当該金銭債権の額
役員給与に関する決議をした日及び当該決議をした機関等
事前確定届出給与に係る職務執行の開始の日
定期同額給与にしない理由及び③の支給時期とした理由
事前確定届出給与に係る職務を執行する期間内に事前確定届出給与以外の給与を支給する場合における給与の支給時期及び支給額(業績連動給与又は金銭以外の資産による給与にあってはその概要)
その他参考となるべき事項

2. 新しい業績連動給与に関する取扱い

(1) 業績連動給与の定義

これまで「利益連動給与」とされていた給与の範囲が拡大し、「業績連動給与」として新たに定義されました(法法第34条第5項)。

利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の内国法人又は当該内国法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される額又は数の金銭又は株式若しくは新株予約権による給与及び特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与で無償で取得され、 又は消滅する株式又は新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの

ただし、特定譲渡制限付株式は、下記(2)の損金算入要件を充足するものの範囲に含まれていません。つまり、現行法令上、業績連動給与の定義には含まれるものの、損金算入は認められないという整理になっていますので、注意が必要です。

(2) 損金算入のための要件

業績連動給与として損金算入するためには、下記のすべての要件を充足する必要があります(法法第34条第1項第3号、法令第69条第17項)

  1. 非同族会社及び同族会社である場合には非同族会社との間に完全支配関係があること
  2. 業務執行役員の全てに対して支給するものであること
  3. 交付される金銭の額若しくは株式若しくは新株予約権の数又は交付される新株予約権の数のうち無償で取得され、若しくは消滅する数の算定方法が下記の要件を満たすものであること
    (a)利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標又は売上の状況を示す指標のうち利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるものを基礎とした客観的なものであること
    (b)金銭による給与は確定額、株式又は新株予約権による給与は確定数を限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様のものであること
    (c)株主総会の決議による決定、報酬委員会による決定その他これに準ずる適正な手続を経ていること
    (d)その内容が上記(c)の適正な手続の終了後遅滞なく、有価証券報告書等に記載され、開示されていること
  4. 金銭による給与又は特定新株予約権で無償で取得され又は消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するものの場合、業績連動指標が確定した日の翌日から1月を経過する日まで、株式又は新株予約権による給与は当該確定した日の翌日から2月を経過する日までに交付し、又は交付される見込みであること
  5. 損金経理をしていること(引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法により経理していることを含みます)

(3) 株価指標と売上指標

今回の改正で新たに業績連動指標に加わった株式の市場価格に関する指標と売上高に関する指標は、次のように規定されています(法令69条第11項、第12項)。

株式の市場に関する指標 内国法人(当該内国法人と完全支配関係のある法人を含む)の株式の市場価格又はその平均値
①が次に掲げる数値の所定の期間以前の期間又は所定の日以前の日におけるすでに確定したもの(確定値)を上回る数値又は①の確定値に対する比率
イ ①の数値に相当する指標の数値
ロ 金融商品取引所に上場されている株式について多数の銘柄の価格の水準を総合的に表した指標の数値
①に発行済株式総数を乗じて得た額
市場価格又はその平均値が所定の期間以前の期間又は所定の日以前の日における市場価格の数値ですでに確定しているもの(確定値)を上回る数値と支払配当の額を発行済株式総数で除して得た数値とを合計した数値の当該確定額に対する比率
①から④に準ずる指標
売上高に関する指標 有価証券報告書に記載されるべき売上高の額
①から費用の額を減算して得た額
①②が対象事業年度前の事業年度のすでに確定している数値(確定値)を上回る数値又は①②の確定値に対する比率
①から③に準ずる指標

(4) 機関決定による適正な手続き

業績連動給与は株主総会等の適正な手続きにて決定することが要請されますが、内国法人との間に完全支配関係がある法人 (上場企業の100%子会社)に適用範囲が広がったことで、子会社側で必要な機関決定に係る手続きが規定されました(法令第69条第16項)。

  1. 完全支配関係がある法人(親会社)の報酬委員会(業務執行役員等がその委員になっているものを除きます) の決定に従ってする子会社の株主総会又は取締役会の決議による決定
  2. 親会社(指名委員会等設置会社を除きます)の報酬諮問委員会 (業務執行役員等がその委員となっているものを除きます)に対する諮問その他の手続を得た当該親会社の取締役会の決議による決定に従ってする子会社の株主総会又は取締役会の決議による決定
  3. 親会社が監査役会設置会社である場合の当該親会社の取締役会の決議による決定(監査役の過半数が算定方法が適正であると認められる旨を記載した書面を提出することが必要です)に従ってする子会社の株主総会又は取締役会の決議による決定
  4. 親会社が監査等委員会設置会社である場合の当該親会社の取締役会の決議による決定 (監査等委員である取締役の過半数が当該決議に賛成していることが必要です)に従ってする子会社の株主総会又は取締役会の決議による決定
  5. 1から4に準ずる手続

3. 新しい役員給与税制の適用時期と損金算入に向けての検討

新しい役員給与税制は、原則として、2017年4月1日以後に支給に係る決議(当該決議が行われない場合には、その支給)が行われる給与から適用されます。また、特定譲渡制限付株式、特定新株予約権及び退職給与に係る改正は、2017年10月1日以後に支給に係る決議(当該決議が行われない場合には、その支給)が行われる給与から適用されます。現在、株式報酬を導入されている企業、今年から導入しようとしている企業は、自社の報酬プラン、支給決議の時期等を確認した上で、新しい税制と旧税制のいずれが適用されるか判断する必要があります。さらに、損金算入を目指す場合には、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれに該当するのか、事前届出の提出や株主総会等による機関決定、開示要件など必要な手続きを早急に検討する必要があります。


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