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国際税務 2017年1月5日号:
ポストBEPSの機能分析

1. 機能分析に係る移転価格文書

我が国では、BEPS行動計画13最終報告書で勧告されている移転価格文書のうちマスター・ファイルに相当するものが、事業概況報告事項として立法された。この事業概況報告事項では、無形資産について一定の記述が求められている。ここにいう無形資産は、法人税法施行令第183条第3項第1号イからハまでに掲げるもののほか、顧客リスト、販売網等の重要な価値のあるものをいうとされており、移転価格税制で想定されている広範な無形資産を前提としている。具体的には、無形資産に係る研究開発の施設の所在地、所有者、費用の額の負担・役務の提供・使用許諾・その他の取決め、対価の設定方針等に関して記述する必要がある(租税特別措置法施行規則22条の10の5(1))。

また、事業概況報告事項には、特定多国籍企業グループの事業の概況として、特定多国籍企業グループの構成会社等が付加価値の創出において果たす主たる機能、使用する重要な資産、負担する重要なリスクその他当該構成会社等が付加価値の創出において果たす主要な役割の概要を記述することとされており、更に、ローカル・ファイルでは、国外関連取引において、各関連者が果たす機能、使用する資産、負担するリスクに応じた移転価格算定方法の選択、そして国外関連取引に係る独立企業間価格の疎明が求められている。

2. 機能分析の新しいフレームワーク

以上のとおり、事業概況報告事項及びローカル・ファイルでは、機能分析及びその結果としての無形資産の保有関係について、広範な記述が求められている。一方、BEPS行動計画8‐10最終報告書では、移転価格の結果と価値創造の整合性を確保するということをテーマにOECD移転価格ガイドラインの新しいフレームワークを提示している。BEPS最終報告書のExplanatory Statementでは、軽課税国に多額の資本を拠出して設立し、従業員はおかずに、実質的な経済活動を行わない、いわゆるキャッシュ・ボックスとよばれる法人に所得を蓄積するというタックスプランニングを防止することを念頭において、独立企業原則のフレームワークを検討していると説明している。

典型的なBEPSの事例では、軽課税国にキャッシュ・ボックスを設け、その法人に研究開発リスクを負担させることによって無形資産を保有させ、無形資産のプレミアム・リターンを配分するということが行われてきた。このような状況に対処するために、行動計画8‐10の最終報告書では、リスクを負担するとはどういうことか、無形資産を保有するためにはどういう機能を果たさなければならないか、資金を提供するということはどういうことか、という観点から問題の整理を行っており、事業概況報告事項及びローカル・ファイルでは、どのような機能分析に基づいて移転価格について整理すべきかが重要な問題となる。

この点について、行動計画8‐10最終報告書は、検証の対象とする取引・事業について、経済的に重要なリスク及びその負担についての契約上の取決めを把握し、それらのリスクを誰が引受けているか、すなわち、リスク・コントロール機能をだれが果たし、その者がリスクを引き受けるための財務的能力があるか否か、独立第三者だとしたならば、その事業を遂行するための資金調達ができるかに基づいて、契約上の取引と実態とが異なる場合には、取引を移転価格上再構築し、機能・リスクに応じた移転価格算定方法を選択するという分析フレームワークを提示している。

3. 若干の考察

4. 多国籍企業における対応

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