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国際税務 2016年6月5日号:
日本企業が活用可能なシンガポールにおける事前確認制度

本稿は、いくつかの国々で導入された新しい事前確認制度と、当該諸国で事業を行う日本企業がその新しい事前確認制度をどう利用することが可能であるかについて書かれている。 同様の内容を含んだものとして、「月刊 国際税務」2014年4月号に掲載された香港の新しい事前確認制度そして2015年5月号に掲載されたベトナムの新しい事前確認制度に関するものがあり、本稿はシンガポールの事前確認制度を対象としている。

1. はじめに

日本企業は、シンガポールにとって最大の投資国の一つである。2013年に、日本は4番目に大きなシンガポールへの投資国となっており、投資額は2012年の587億シンガポールドルから2013年には720億シンガポールドルと増加している。今後もさらなる伸びが見込まれている。2014年のJETROの調査によると、シンガポール内で活動している日本企業316社の内、51.6%が今後の事業拡大を計画している。

それと同時に、多くの日本企業は地域ハブの設置場所としてシンガポールを選択している。その理由として、シンガポールの安定した政治環境や、強い経済力と可能性、自由貿易協定による多くの国々との地域的及び国際的結びつき、様々な 魅力的な税制優遇策があるということが挙げられる。例えば、2013年4月に、三菱商事はMitsubishi Corporation RtM International Pte. Ltd(. 以下「、RtM International」)という金属資源の貿易子会社を、2013年9月には、NECが「世界中の市場へ社会的インフラ解決策を提供するため、最新の安全性とビックデータ技術に投資する、洗練された新しい研究センター」として、NEC Laboratories Singapore(以下、「NLS」)をシンガポールに設立した。これらの会社は、日本企業によるシンガポールへのますますの投資と、シンガポールにおける地域のハブの設置という動向の実例と言える。

貿易を促進する一方で、シンガポールと日本の両国間における二重課税を防止するため、シンガポールは1961年に日本との間で二重課税防止条約(租税条約)を締結し、現行条約は1995年4月28日から有効となっている。この条約は、シンガポールで事業を行う日本企業及び日本で事業を行うシンガポール企業に対して、税務の確実性を担保し、両国の経済及び通商に係る二国間関係の強化を図るものである。さらに事前確認(以下、「APA」)制度の導入によって、両国企業は二国間での国外関連取引に関して、両国での税務上の取扱いに係る不確実性を排除することができることになる。日本は1987年に、世界で初めてAPA制度を導入した国である。日本は、1987年から2013年の間に1,306件の二国間APAの合意実績を有しており、APAの取扱に豊富な経験がある。

一方シンガポールは、以前よりAPAを実施していたが、2006年2月に発行された移転価格ガイドラインにて、正式にAPA制 度を施行した。シンガポール税務当局(IRAS)は、APA更新を含む50件以上のAPAを実施しており、うちおよそ60%が二国間 APAである。これまで、日本がシンガポールとのAPAの最も多い国である。近年、シンガポールではAPAに係る納税者の関心 が高まっており、IRASは納税者の需要に応えようと、体制を強化している。上記のように、シンガポールはマクロ的な事業環境と税制枠組みが充実しているため、シンガポールにおいて事業を行う日本企業は、国外関連取引の移転価格についてAPA制度を利用した上で、継続的な投資を進めている。シンガポールにおいて事業を行う日本企業は、国外関連取引における不確実性を取り除き、二重課税リスクを回避すべく、APA制度を活用すべきである。

※下記の詳細は、PDFでご覧いただけます。

2. シンガポールにおけるAPA制度

3. シンガポールのAPA制度と日本のAPA制度


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