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旬刊経理情報 2017年2月20日号:
中国の事前確認制度に係る新規定の概要と実務への影響

移転価格リスク管理の有効手段となるか

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公認会計士・税理士 大久保 恵美子

中国の国家税務総局は2016年10月に、移転価格税制における事前確認の管理に係る新しい規定を公布した。 これは、中国のこれまでの実務経験に基づき、事前確認制度の整備を図ると同時に、「税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting)」(以下、「BEPS」という)プロジェクトの成果を体現するものでもある。

本稿では、新しい規定が公布された背景と主な変更点を紹介するとともに、この新しい規定が事前確認の実務に与える影響を解説する。なお、本稿における意見にわたる部分は筆者の私見である。

中国における事前確認制度

中国における事前確認制度に係る規定の変遷は、図表1のとおりである。

図表1: 事前確認制度に関する規定の変遷

施行年度 規定 概要
1998年 「関連企業間取引の税務管理規程(試行)」(国税発[1998]59号)(失効) 移転価格調整方法の1つとして、事前確認が可能な旨を規定
2002年 改正後の「租税徴収管理法実施細則」 事前確認を制度として規定
2004年 「関連企業間取引の事前確認実施規則(試行)」(国税発[2004]118号)(失効) 事前確認の具体的な手続等を初めて規定
2008年 「企業所得税法」および同実施条例「特別納税調整実施弁法(試行)」(国税発[2009]2号)(2号通達) 2号通達において、事前確認制度の詳細を規定
2016年 「事前確認管理の整備に関する事項の公告」(国家税務総局公2016年64号) 2号通達の事前確認制度に関する規定を改正

中国で最初の1国事前確認が成立したのは1998年であり、その後、初めての2国間事前確認が日中間で成立した2005年から、国家税務総局は事前確認の管理監督を実 施するようになった。また、2008年に新しい企業所得税法が施行されたことに合わせ、事前確認を含む移転価格税制に関する規定も整備された。

事前確認の実施状況に関して、中国は2009年度分から、事前確認制度の紹介と事前確認の成立件数等の統計データを含む「中国事前確認年度報告」を毎年公表している。 2016年末に公表された2015年度版の統計データの一部を抜粋したものが図表2、図表3である。 当該データから、2015年末時点で申請または協議中の案件のほとんどは2国間事前確認であり、その多くがまだ申請受理前の段階にあることがわかる。 その背景には、中国の税務機関、特に国家税務総局における人的資源の不足等の制約があると考えられる。 また、正式申請から合意までに要した期間に関する2005~2015年の統計データは、多くの2国間事前確認が2年以内に完了したことを示しているが、実際には正式申請までに長い期間を要した可能性がある。

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