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ARES不動産証券化ジャーナル Vol.36 2017年4月1日発行:
投資法人の最新税務動向 第4回 一時差異等調整積立金

過去3回(第1回第2回第3回)にわたり一時差異等調整引当額を解説してきたが、今回は一時差異等調整積立金について解説する。 最近、投資法人の決算において一時差異等調整積立金の文字を目にすることが多くなっている。 戻入れの重圧が大きい一時差異等調整引当額に比べ、一時差異等調整積立金においても取崩しの必要はあるものの、その金額は予定できるものであり、柔軟性のあるものとなっている。

なお、文中の意見にあたる部分は筆者の私見であることを、あらかじめお断りしておく。

1. 一時差異等調整積立金(RTA: Reserve for Temporary difference Adjustment)

RTAとは、任意積立金の一種であり、投資法人の計算に関する規則(以下「計算規則」という。)第2条第2項第31号に規定されている。

31 一時差異等調整積立金 投資法人が、金銭の分配に係る計算書に基づき積み立てた任意積立金のうち、利益超過税会不一致(収 益等の合計額から費用等の合計額を控除して得た額が、益金の額から損金の額を控除して得た額を超える場合における税会不一致をいう。) の範囲内において、将来の利益処分に充当する目的のために留保したものをいう。

前回まで解説してきた一時差異等調整引当額(以下「ATA(Allowance for Temporary difference Adjustment) 」という。)では、 その限度額の算定上「所得超過税会不一致」が使われていたが、RTAでは「利益超過税会不一致」が積立ての範囲となる。 「税会不一致」は、計算規則第2条第2項第29号において包括形式で定義されており、これをまとめたのが次の算式である。

利益超過税会不一致=B-A
A 益金の額から損金の額を控除して得た額(税務ベース)
=各事業年度における税務上の所得金額(支払配当損金算入前、繰越欠損金控除前)
B 収益等の合計額から費用等の合計額を控除して得た額(会計ベース)
=各事業年度の当期純利益(税引後)+交際費等のうち税務上損金不算入となるもの+寄附金のうち税務上損金不算入となるもの +法人税、地方法人税、法人住民税(税務上損金不算入)

所得超過税会不一致が「税務上の所得が会計上の利益を超える場合のその超過額」であるのに対して、 利益超過税会不一致は「会計上の利益が税務上の所得を超える場合のその超過額」であり、両者は反対の概念であると言える。

第1回において、所得超過税会不一致が発生した場合には、利益をすべて分配しても税務上の所得に足りないことから、その不足する部分 (所得超過税会不一致)に対して課税されてしまうが、この不足する部分に対してATAを分配すれば、利益の分配と同様に損金算入され、課税が発生しないことを解説した。 一方、利益超過税会不一致の場合には、利益分配の原資となる会計上の利益が税務上の所得よりも多いため、利益のすべてを分配すれば当然課税は発生しないし、 税務上の所得と同じ額だけ分配し、残りを内部留保することも可能である。

ではなぜ、あえてRTAを積まなければならないのか。それを説明するためには、平成21年度税制改正まで遡る必要がある。

※以下の詳細は、PDFからご覧ください。

2. 平成21年度税制改正
3. RTAの目的
4. RTAの取扱い
5. RTAで対応できない利益超過税会不一致
6. RTAの取崩し
7. RTAを取り崩した後の利益の取扱い
8. RTA導入前に発生した負ののれんを有する投資法人の取扱い
9. RTA導入前に発生した負ののれんをRTAに積み立てた場合の税務上の取扱い


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